愛知県、鹿児島県(屋久島)で選定した固定プロットで、齧歯類(野ネズミ)の生息状況や種子食昆虫の加害様式を調査した。 各プロットに金属製箱ワナ(シャーマントラップ)を仕掛けた。捕獲した野ネズミは、種(アカネズミ、ヒメネズミ、スミスネズミ)、性別、体重、繁殖サイン等を記録した後、指切り法によって個体識別して放逐した。野ネズミの密度、体重、繁殖時期などを、季節や各プロットの環境特性(樹種構成、下層植生、樹冠開放(ギャップ)の程度、傾斜、水系分布、標高)を考慮して吟味した。とくに、標高については、体重との関連性(高い標高ほど軽くなる)が見出された。また、下層植生については、ササ類の一斉開花・結実・枯死現象に着目し、野ネズミの個体群動態や生活様式に与える影響を検討した。 調査木の樹冠下に設置した種子トラップを定期的に巡回し、落下時期に種子を回収した。まず外観から、とくにゾウムシ類の微小な産卵痕の有無に注意して類別した。重さやサイズも計測した。種子を「“真の”健全」、「ゾウムシ類の加害」、「ガ類の加害」等に分類し、虫害種子については切開して内部状態を確認するとともに、幼虫の飼育を試み、羽化成虫を同定した。同様の調査を、林外の孤立木でも実施し、種子の落下消長・生産パターンや種子食昆虫の種構成・加害頻度の季節的変遷などについて、林内木の結果と比較考察した。 そして、マイクロフォーカスX線CT装置でスキャンし、撮影後、3D画像展示ソフトで立体視し、幼虫の数やサイズ(体長、体幅)、摂食部(空隙)の体積を定量化した。また、種子をバイアル瓶に入れて、揮発ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。 これらの種子を様々に組み合わせで餌台に並べ、林床に静置した。自動撮影カメラ・ビデオを用いて、野ネズミがどのカテゴリーの種子を好むのか(持ち去り率、持ち去り順位等)を判定した。
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