研究課題
本研究は,湿潤アジアおよび中部アフリカにおける熱帯林生態系再生過程を,植物―微生物系における共生関係の回復を契機とした物質動態系の再確立として捉えることによって,生態学的レジリアンスに含まれる個々のプロセスをそれぞれ明確に認識する方法論を確立することを目的として実施した。3年間を通じて得られた主な知見は以下の3点である。1)インドネシアとカメルーンのOsisols, Ultisolsの森林生態系における窒素動態を特徴付ける要因は,植生による窒素供給量(マメ科樹種が優占するか否か)と,土壌酸性(アルミニウム濃度)に関わる硝化特性の違いである。2)タイ国北部の焼畑農耕地および年数の異なる休閑地における正味の窒素動態について解析した結果,比較的安定な有機態窒素プールを反映して,総無機化速度はそれほど増減しなかった一方で,総硝化速度はCN比の低下や塩基飽和度の増加に応答して増大した。3)カメルーンのOxisolsとUltisolsの森林における物質動態を比較検討した結果,Ultisolsではリター堆積層からの有機酸放出が鉱物風化を促進し,これがKの供給増となっている可能性が示された。4)ここまで得られた知見を検証するために,2018年3月には新たにベトナム中南部丘陵 地のOxisolsとUltisolsそれぞれの天然林およびアカシア(マメ科)植栽地に調査地を設定し,窒素・リンを中心とした物質動態の追跡を開始した。現在1年分のデータを収集した段階にあり、引き続き採取土壌および溶液・気体試料を用いて養分(酸性)環境,窒素動態,微生物群集組成および機能特性を解析する。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 備考 (1件)
Agriculture, Ecosystems and Environment
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http://www.soils.kais.kyoto-u.ac.jp/