研究課題/領域番号 |
16K14943
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 直紀 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (40335302)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 水素・酸素同位体比 / 高電圧パルスマーキング / 熱帯樹木 |
研究実績の概要 |
タイ東北部サケラートの熱帯季節林および半島マレーシア中部アイルヒタムの熱帯雨林において、月に2回の割合で降水を採取し、酸素および水素同位体の分析を行った。また、上記2か所およびボルネオ島キナバル山の山地林において、代表的な樹種に直流高電圧パルスによる形成層マーキングを施した。また、キナバル山の樹種については以前に行ったマーキング個体から成長錐コアを採取し、木部構造を顕微鏡観察した。 アイルヒタムの降水では、水素及び酸素同位体比の天水線は傾き7.56を示し、熱帯地域の降水の典型的な特徴を示した。降水量の多い7月から8月にかけて同位体比の小さくなる季節変化を示し、木部構成成分の酸素同位体比が同様の季節変化を反映している可能性を示唆した。サケラートの降水の同位体組成にも同様の季節性を認めたが、雨季乾季のある気候下で降水量の季節変動が大きく、木部構成成分の酸素同位体比が降水のそれを明瞭に反映するかについては検討が必要と思われた。 キナバル山山地林樹木の木部には、形成層マーキングの影響を明瞭に残しているものとそうでないものとが見られ、電気刺激に対する樹種ごとの感受性の違いを認めた。マーキングの影響は、道管または木部繊維の細胞壁の薄壁化と放射組織柔細胞の異形化に最も明瞭に表れた。これらが観察された部位を、マーキングを施した時点に形成層の存在した場所とすることが妥当であると判断された。幹の肥大成長が緩やかな樹種・個体ではマーキングの間隔が短いと、電気刺激による影響をはっきりと確認ができない場合があり、手法の適用にあたって対象の選択を考慮する必要があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年はキナバル山における降水の採取を行うことができなかった。また、インピーダンス測定器の作製が間に合わず、いずれも次年度の研究計画に持ち越すことになった。また、東北タイの調査地において、以前から継続してマーキングを行っていた観測個体が大量に枯死し、計画の修正が必要となった。
|
今後の研究の推進方策 |
各調査地において2年目の形成層マーキングを行う。東北タイおよび半島マレーシアでの降水採取は継続し、新たにボルネオ島キナバル山での降水採取を開始する。また、持ち越しとなっていたインピーダンスのモニタリングを開始する。また、3調査地の観測個体から木部試料を採取し、成長輪構造の顕微鏡観察と、酸素安定同位体比の測定を行う。予備調査の結果を熱帯生態学会において発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
インピーダンス計の作製に当初予想よりも費用が掛かったので、旅費と謝金分を予定よりも削減し、そのための差額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
差額分は少額なので、インピーダンス計の追加作製にかかる物品費にあてる。
|