(1)効率的なカルス苗育成方法の開発: 水耕・ミスト栽培で発根させた苗をコンテナに秋植栽した結果、根量が0.5g以下の苗でも植栽半年後にはすべて同等の根量まで発達することを確認した。【全期間の成果】①カルス形成が根の原基ではないこと、②カルスは発根を促進するホルモンの生成部位としての前駆的な役割を果たしている可能性が高いこと、および③水耕・ミスト栽培で発根させた苗もその後の育苗や植栽に十分に耐えられることが明らかとなった。 (2)適切なカルス形成状態とその判定手法の開発:夏期植栽後3か月で根量が1.345gに到達しない苗は生残が見込めないこと、およびコンテナ苗であれば半数が生存できることを明らかにした。さらに、植栽2年後のペーパーポット苗はコンテナ苗と同等以上の根および地上部成長が得られることを確認した。【全期間の成果】①根量の少ないカルス苗では夏季植栽の活着率が低いこと、②培地と根が一体化したコンテナ苗では同量の根量でも裸苗より活着率が高いこと、③期首根乾重が0.1g以上の苗では摘葉によって側枝重を抑えることで100%の活着率が得られること、および④ペーパーポットを活用することで、根系未発達の苗と培地とを一体化させ、根の充実したコンテナ苗と同等の活着が得られる可能性があること、が明らかとなった。 (3)植栽適用可能条件の解明: 初年度に行った潅水実験結果をもとに実験期間中のポット内土壌の含水率の変化を推定し、苗の枯死・生残を左右する土壌水分条件を数理モデルを用いて検索した。その結果、3週間遡った積算の含水率が苗の生死およびコンテナ苗と裸苗の違いを最もよく説明できることを明らかにした。【全期間の成果】3週間遡って積算した土壌含水率が、根量・培地の有無による苗の活着率を説明する要因であること、および根系未発達苗を活着させるうえでペーパーポット苗が有効である可能性が示された。
|