樹皮組織に含まれる無機元素に関する基礎情報を得ることを目的として、前年度よりもさらに対象樹種を増やし、ICP-MSによる26元素(Al、As、B、Ba、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Cs、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、P、Rb、S、Se、Sr、V、Zn)の一斉分析を行った。本年度はとくに樹皮型に着目して樹種を選定・比較し、内樹皮と外樹皮で含有量の違いが生じる原因を検討した。その結果、樹皮型による違いは明らかで、外樹皮を形成するコルク形成層が短命で師部組織中に次々と再生することによりリチドームを発達させる樹種では、内樹皮・外樹皮間で各元素の含有量に大きな違いは認められなかった。これに対して、コルク形成層が長命でリチドームが発達せず、外樹皮が単一の周皮で校正される樹種では、外樹皮の方が内樹皮よりも一部の元素が桁違いに少なかった。これらの結果から、外樹皮に含有される26種の無機成分は内樹皮(師部組織)中に蓄積されたものが外樹皮形成の際に取り込まれたもので、ピュアな周皮あるいはコルク組織には決して多く蓄積するものではないものと推察された。着葉期に採取した樹種については同時に採取した葉の分析も行った。前年度までに調べた樹種と同様に、どの元素も葉の方が樹皮組織よりも含有量(乾重量比)が多い傾向があった。また、葉と樹皮組織のCa塩の結晶形についても走査電子顕微鏡により比較観察を行った。両組織に含まれるCa塩結晶の形態は樹種毎に特徴があること、葉には樹皮組織よりも多くのタイプの結晶を含む傾向があることが明らかになった。
|