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2016 年度 実施状況報告書

単一細胞直接可視化法による樹木細胞分化機構の新規イメージング解析技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K14954
研究機関東京農工大学

研究代表者

船田 良  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード木質バイオマス / 細胞壁 / 細胞骨格 / 微小管 / アクチンフィラメント / 生体イメージング / 共焦点レーザ走査顕微鏡法 / 培養細胞
研究実績の概要

再生可能な資源・エネルギーである木質バイオマスの有効利用のためには、樹木の形成層細胞が生産する仮道管、道管要素、木部繊維など二次木部細胞の分化機構を理解することが重要である。これまでにも、二次木部細胞の分化機構に関する研究が行われているが、依然充分な知見は得られていない。そこで本研究課題では、樹木培養細胞から二次木部様細胞へ直接分化する新規モデル系を用いて、細胞壁構造のパターン形成を解析する。さらに、細胞骨格の関連遺伝子とGreen Fluorescence Protein(GFP)遺伝子を導入した培養細胞を作成し、高精細共焦点レーザ顕微鏡法など新規生体イメージング解析技術により、細胞骨格の動的変化をリアルタイムで解析できる単一細胞直接可視化法の開発にチャレンジする。交雑ポプラのカルスから管状要素への誘導率を向上させるため、培地の植物ホルモン条件を検討したところ、オーキシン輸送阻害剤により管状要素の誘導が阻害された。オーキシンの極性輸送が、管状要素の誘導に必須であるといえる。また、広葉樹であるトチノキの幼葉からオーキシンとサイトカイニンを組み合わせてカルスを誘導し、増殖性が高い交雑ポプラと共存培養を行ったところ、細胞全体に堆積した二次壁を有する管状要素が誘導された。さらに、細胞構造を詳細に解析したところ、誘導された管状要素には、二次壁に壁孔様の構造とは明らかに異なる、せん孔様の構造が観察された。トチノキからの培養細胞は、植物の通水経路として重要なせん孔の形成機構を解析する優れたモデル系になる可能性が高いといえる。一方、GFP遺伝子と微小管付随タンパク質をコードする遺伝子を発現させて、微小管の挙動を共焦点レーザ顕微鏡法を用いて連続的に解析したところ、管状要素の分化に伴い微小管の局在が動的に変化した。微小管の配向や局在が、壁孔など複雑な構造のパターン形成を制御しているといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、樹木の培養細胞から直接二次木部様細胞を誘導する新規モデル系を確立し、細胞壁の形成過程を高精細共焦点レーザ走査顕微鏡法など新規生体イメージング解析技術で解析し、細胞骨格の動的変化などを単一細胞レベルでリアルタイムで解析することである。現在までの研究により、交雑ポプラなどの培養細胞から、厚い細胞壁と複雑な修飾構造を形成する管状要素を安定的に誘導する条件の設定に成功している。また、トチノキの培養細胞から発達したせん孔を形成する新規モデル系を確立した。さらに、交雑ポプラにおいてGFP遺伝子と微小管付随タンパク質をコードする遺伝子を発現させた培養細胞を作出し、培養細胞内の微小管の配向の動的変化を共焦点レーザ走査顕微鏡法により安定的に観察できる系を確立した。これまで得られた成果の一部は学会で発表し、論文として公表したことから、順調に研究が進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

樹木の培養細胞から、厚い二次壁と有縁壁孔やせん孔など複雑な修飾構造を有する二次木部様細胞を直接誘導する条件をさらに検討しする。特に、せん孔の形成が認められたトチノキの培養細胞において、誘導率の向上とさらに発達したせん孔を形成する系を確立する。トチノキにおいても交雑ポプラ同様に、GFP遺伝子と微小管付随タンパク質をコードする遺伝子を発現させた培養細胞の作出を試み、細胞骨格の動的解析を進め、有縁壁孔とせん孔の形成機構の違いを明らかにする。また、GFP遺伝子とアクチン結合タンパク質をコードするfimbrin遺伝子を発現させた培養細胞を作出し、培養細胞から分化中の細胞における微小管およびアクチンフィラメントの立体配置を解析し、細胞分化における細胞骨格の役割を明確にする。単一細胞レベルでの細胞骨格の解析は、高精細共焦点レーザ走査顕微鏡法とともに多光子励起顕微鏡法を用いて行う予定である。以上の研究から得られた成果を最終報告書にまとめ、学会等で発表するとともに、論文として広く公表する。

次年度使用額が生じた理由

培養細胞の誘導条件の設定など、研究が計画よりスムーズに行うことができたため、各種試薬や顕微鏡調整用品の購入費など当初予定していた物品費が減少した。そこで、予算を有効に使用し、次年度の研究を充実させるため、予算を次年度に繰り越すことにしたため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

培養細胞の細胞壁成分や細胞骨格を可視化する上での各種試薬等の消耗品に使用する。また、得られた成果を発表するための国内および国際学会での旅費に使用する。また、これまでに得られた成果を基に、現在作成中の論文の英文校閲費や論文投稿料に使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Responses of ray parenchyma cells to wounding differ between earlywood and latewood in the sapwood of Cryptomeria japonica2017

    • 著者名/発表者名
      Nakaba, S., Morimoto, H., Arakawa, I., Yamagishi, Y., Nakada, R., Funada, R.
    • 雑誌名

      Trees

      巻: 31 ページ: 27-39

    • DOI

      10.1007/s00468-016-1452-z

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Relationship between the earlywood-to-latewood trantition and changes in levels of stored starch around the cambium in locally heated stems of the evergreen conifer Chamaecyparis pisifer2016

    • 著者名/発表者名
      Rahman, Md.H., Begum, S., Nakaba, S., Yamagishi, Y., Kudo, K., Nabeshima, E., Nugroho, W.D., Oribe, Y., Funada, R.
    • 雑誌名

      Trees

      巻: 30 ページ: 1619-1631

    • DOI

      DOI 10.1007/s00468-016-1395-4

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Effects of the application of exogenous auxin and defoliation on cambial reactivation and xylem differentiation in locally heated stems of Abies homolepis seedlings2017

    • 著者名/発表者名
      Md Hasnat Rahman, Shahanara Begum, Kayo Kudo, Takahiro Muraishi, Yusuke Yamagishi, Satoshi Nakaba, Ryo Funada
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] 交雑ポプラ培養細胞を用いたin vitro管状要素誘導に合成オーキシンNAAおよび2,4-Dが及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      山岸祐介、鎌田 裕、工藤佳世、半 智史、船田 良、荒川圭太、佐野雄三
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] 交雑ポプラ培養細胞の管状要素誘導系におけるリグニン沈着過程の解析2017

    • 著者名/発表者名
      吉田裕子、山岸祐介、半 智史、船田 良
    • 学会等名
      第67回日本木材学会大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-19
  • [学会発表] 交雑ポプラカルスにおける二次木部様管状要素の分化2016

    • 著者名/発表者名
      山岸祐介、吉田裕子、渡辺宇外、半 智史、船田 良、荒川圭太、佐野雄三
    • 学会等名
      第34回日本植物細胞分子生物学会大会
    • 発表場所
      信州大学(長野県上田市)
    • 年月日
      2016-09-01 – 2016-09-03
  • [学会発表] Regulation of wood formation in trees: the role of temperature in cambial activity2016

    • 著者名/発表者名
      Ryo Funada, Shahanara Begum, Kayo Kudo, Md Hasnat Rahman, Yusuke Yamagishi, Eri Nabeshima, Widyanto Dwi Nugroho, Yuichiro Oribe, Satoshi Nakaba
    • 学会等名
      International Academy of Wood Science Meeting
    • 発表場所
      Academie d’Agriculture de France (Paris, France)
    • 年月日
      2016-06-01 – 2016-06-03
    • 国際学会
  • [備考] 東京農工大学植物資源形成学研究室

    • URL

      http://web.tuat.ac.jp/~keisei/

  • [備考] 東京農工大学研究者情報

    • URL

      http://kenkyu-web.tuat.ac.jp/Profiles/1/0000023/profile.html

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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