研究課題/領域番号 |
16K14958
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
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研究分担者 |
鈴木 史朗 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (70437268)
梅澤 俊明 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80151926)
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
高野 俊幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (50335303)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リグニン / フラボノイド / バイオマス / 細胞壁 / トリシン / 酵素糖化 |
研究実績の概要 |
本研究はイネ科植物特有のリグニンの主要部分構造として最近見出されたリグニンーフラボノイド共重合体(LFC)の形成・機能の解明ならびにその代謝工学的改変によるイネ科バイオマスの利用性向上を目的とする。平成28年度は、LFC 形成に関与するフラボノイド合成遺伝子群の発現を抑制した形質転換イネの作出と特性解析を進めた。標的とするフラボノイド合成遺伝子数種のRNAi発現抑制株ならびにT-DNA挿入機能破壊株を栽培し、遺伝子発現解析や細胞壁の特性解析を進めた。これまにイネLFC形成に深く関与すると予想されるフラボンシンターゼ(FNSII)、フラボノイドメチル化酵素、フラボノイド水酸化酵素などの発現を抑制した形質転換イネを複数得ている。本年度は特に、FNSII発現抑制イネについて、成長性、細胞壁形成関連遺伝子の発現状況、細胞壁構造、バイオマス利用特性について、詳細な解析を進めた。FNSII発現抑制イネでは野生株と比較して細胞壁リグニンの総量が低下していることが分かった。また、野生株ではトリシンが重合したLFCが形成されるのに対して、FNSII発現抑制イネでは野生株の細胞壁中には全く存在しないナリンゲニンが重合した改変LFCが形成されることも分かった。さらに、これら細胞壁構造改変の結果、バイオマスの酵素糖化性が大きく向上することを見出した。以上の成果の一部をとり纏め、論文発表(2件)と学会発表(7件)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、イネLFC形成に深く関与すると予想されるフラボノイド合成遺伝子群の発現を制御した形質転換イネを複数作出し、それらの特性解析を進めた。得られた形質転換イネは高いバイオマス利用特性を示すなど当初の計画以上の研究成果が得られ、論文発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度に引き続き、LFCの形成・機能の解明を目指し、イネLFC形成を改変したイネ 変異体および形質転換体の解析を進める。特に、メチル化酵素、芳香核水酸化酵素を抑制したイネ形質転換体の詳細な細胞壁構造とバイオマス特性の解析を中心に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画ではH28年度はイネリグニンの化学修飾による機能性材料作成等に係る予備実験を始める予定としていた。一方、LFC形成に関わる遺伝子群の同定と形質転換イネの解析を進めたところ、成果報告欄に記載の通り、当初計画以上の研究成果が得られたことから、早急に論文報告としてまとめること必要があると判断した。このため、形質転換イネの解析に関わるデータの蓄積に専念し、上記の予備実験は来年以降に実施することとした。これにより、本年度の執行予算の一部を来年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画ではH28年度に行う予定であったイネリグニンの化学修飾による機能性材料の作成等に係る実験を、H28年度に繰り越した予算を用いて、H29年度に実施する。
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