研究課題/領域番号 |
16K14967
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邊 壮一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20507884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ニホンウナギ / 種苗生産 |
研究実績の概要 |
ニホンウナギ仔魚における嗅覚受容細胞の興奮を検出するマーカーとして利用可能な遺伝子およびタンパクの候補を同定し、その検出手法を確立した。マーカーとしての有効性を検証するため、各種物質曝露に対する応答性について解析を行ない、現在最も有効かつ簡便な方法の絞り込みを行なっている。また、ニホンウナギ仔魚の行動解析を行なう上で、重要となる極小照明条件における行動観察系を構築した。当初は高感度カメラの使用を想定していたが、赤外線照明装置による観察が水系においても有効であることが確認されたため、これを用いることとした。撮影時の光環境を一定に保つため、カメラおよび可視光照明装置については暗室外からの遠隔操作システムを構築した。仔魚は透明な魚体を持つものの、光源位置の最適化により非常にコントラストの高い映像が得られることが示され、当初想定していなかった遊泳姿勢についても観察できた。また赤外線に対しては仔魚が全く反応しないことも示され、ニホンウナギ仔魚は視覚として赤外線を感知できないことが明らかとなった。さらに可視光条件について微小光量条件を精密に制御可能なシステムを構築し、ニホンウナギ仔魚の走光性について検討を行なった。その結果、仔魚の走光性には日周性があることが示唆され、今後の飼育システム構築に対して有用な知見が得られた。加えて、本システムは民生品の高解像度ビデオカメラの使用が可能であり、当初困難と考えていた初期仔魚の行動観察系についても安価に構築できることが示された。現在本システムを利用して、仔魚の行動観察を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に計画していたニホンウナギ仔魚の嗅覚受容細胞の興奮検出系の構築と極小照明条件下における行動観察システムの確立はおおむね完了し、次年度計画の実施に支障がない状況となっている。嗅覚受容細胞の興奮検出についてはいくつかの検出系を同時に検討しており、もっとも簡便かつ有効な手法の絞り込みまでほぼ完了しつつある。また、行動観察系については赤外線照明装置を使用することにより、当初想定していたよりも優れたシステムが確立された。本実験系を用いることで、長時間、連続的に、初期仔魚を含めたすべての発達段階において、遊泳姿勢も含めた多角的観察を、高精細映像によって行なうことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究についても当初の計画通り、ここまでに確立された各実験系を活用し、ニホンウナギ仔魚における嗅覚特性改変・増強技術およびそれを発展させた「嗅覚餌付け」技術の検証を行なう。
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