研究課題/領域番号 |
16K14970
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70281003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 氷冷 / 産卵誘発 / メダカ / ゼブラフィッシュ / 低温麻酔 |
研究実績の概要 |
申請者は、メダカを氷冷後に、飼育水へと戻すことで放卵の誘発が可能であるこを見出し、前年度までに放卵誘発の条件の至適化を試みた。その結果、放卵する個体の割合が最も多かったのは、氷冷を0℃で1分30秒間行い、その後25℃の生理食塩水で蘇生した区であることを見出してきた(放卵個体率;63%)。本年度にこれらの条件のうち氷冷時間をさらに詳細に検討した結果、氷冷時間を1分45秒に伸ばすことで、放卵成功個体の出現頻度を82%にまで上昇させることに成功した。また、これらの方法で作出した次世代個体は、正常に発生、成長し、正常な妊性を保持した成魚へと育ちうることを確認した。一方、本技法の汎用性を確認するべく、コイ科のゼブラフィッシュを用いて第一に氷冷麻酔の条件を検討した。水温26度で飼育したゼブラフィッシュを10-20度の種々の水温の水槽へと移槽した結果、水温16度の水槽に移した際に、効率よく麻酔をかけられることが明らかとなった。またこれらのゼブラフィッシュを再び26度に戻した場合でも、斃死個体はほとんど出現しなかった。そこで、次に排卵が確認された雌のゼブラフィッシュを用いて放卵誘発実験を試みた。具体的には16度の水槽内で1分間、1分30秒間、2分間、それぞれ低温麻酔を施し、その後、急激に26度に戻すという操作を行ったが、いずれの条件においてもメダカで確認されたような放卵現象を確認することができなかった。なお、14度以下の水温で低温麻酔を施した場合、その蘇生率が大幅に低下したため、処理水温を下げるという刺激を加える実験については断念せざる終えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メダカを用いた実験は極めて再現性もよく、前年度より高効率な放卵誘発条件を見出すことができた。しかし、本法を他種に応用した場合の効果が現段階では得られていない。ゼブラフィッシュにおいては、十分な反復数をもって、種々の条件での処理を施したが、親魚の生残率を犠牲にせずに放卵誘発を可能にする条件を見出すことができなかった。現在、アユ、ニベでの検討を開始しており、これらの魚種についての条件検討を次年度中には完成させたい。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、ゼブラフィッシュでは低温刺激による放卵誘発が可能になっていない。メダカとゼブラフィッシュでの結果しか得られていないため、結論を得るには時期尚早であるが、一つの仮説としては低温麻酔ではなく、あくまでも氷冷麻酔での処理が重要である可能性が考えられる。したがって、次年度は氷冷麻酔で斃死しない魚種であるアユとニベに焦点を絞って条件のさらなる探索を進めていきたい。
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