前年度までにメダカでは氷冷処理(0℃、1分45秒)により、高効率(処理個体の82%)で放卵を誘起可能であることを見出した。一方、熱帯性の種であるゼブラフィッシュは低温耐性が乏しく、マイルドな処理では放卵に至らないこと、逆に強い処理を加えると斃死してしまうことを確認した。 そこで今年度はまずアユを用いて同様の氷冷処理を試みた。本実験では産卵期に自然排卵したアユ親魚(18度で飼育)を0℃で1-3分間の様々な時間、氷冷処理を施し、その後急速に18度に戻す処理を行った。しかし、これらの処理により自ら卵を放卵する個体は全く見られなかった。なお、これら一連の氷冷処理に伴い、ゼブラフィッシュで見られたような処理個体の斃死は認められず、その後も特段に生残率が低下するような現象は見受けられなかった。 次に海産魚のニベを用いて同様に氷冷処理を試みた。本実験では雌親魚を14時間明期、10時間暗期、さらに26℃で飼育することで自然排卵を誘起し、排卵が確認された個体を用いて氷冷処理を施した。これには0℃での氷冷処理を1分から5分間の様々な期間行い、その後急激に26度の飼育水に戻す処理を施した。しかし、いずれの処理区においても放卵は認められず、氷冷処理の有効性は確認できなかった。また、これらの処理を施した雌親魚のかなりの個体が処理後24-28時間程度で斃死してしまったため、本処理方法は少なくともニベには不適であることが明らかとなった。
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