研究課題/領域番号 |
16K14974
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タイ科魚類 / クロダイ / マダイ / 浮遊卵 / 発育段階 / 減耗 / 広島湾 |
研究実績の概要 |
広島湾において、4-5月に、水中ポンプにより球形分離浮遊卵を採集した。卵の採集定点は、これまでの実績により、広島湾の内外に設定した計14定点とし、採卵水深は,2,5,10,15mとした。採集した卵の一部は、直ちに1㎜前後の球形卵にソーティングし、顕微鏡下で発育段階を精査した後、エタノール固定した。 ラボに持ち帰った卵は、モノクローナル抗体による抗原抗体反応によりクロダイ卵を得た。陰性反応の卵はマダイ卵と仮定し、以下の分析に用いた。また、種苗生産施設から入手した発育段階の異なるマダイおよびクロダイ卵をスタンダードとし、以下の分析に用いた。 種苗生産施設から得たクロダイおよびマダイ卵よりDNAを抽出し、ナノドロップを用いDNA量を測定した。その結果、胞胚形成期以降、DNA量が急激に増加し、受精後、1日目と2日目のDNA量には有意な差異が認められた。一方、粗DNAをテンプレートとして、種特異的なミトコンドリアDNAマーカーを用いて種同定を行いつつ、定量PCR法により卵の発生段階を調べた。その結果、桑実胚から孵化直前までの各発育段階とPCR産物量には相関が認められた。 広島湾より得たクロダイおよびマダイ卵を検体とし、DNA量およびミトコンドリアDNA量から発生段階を推定したところ、桑実胚が最も多かった。クロダイの桑実胚の採集時間から受精時間を逆算すると、クロダイの産卵時間のピークは午後8時~12時と考えられた。さらに、桑実胚に比べ、胚胎形成以降の卵は激減することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、①浮遊卵の発生段階をシステマチックに推定できる手法をDNA多型および定量解析によって確立することである。フィールドでは2種のタイ科魚類の卵を用いて②親魚資源量(卵密度とNe)、③産卵場や産卵時間の解明、④卵発生段階による減耗率の推定⑤DNA多型解析による遺伝子流動(ジーンフロー)の把握、⑥浮遊卵の捕食者の特定や減耗要因の解明を試みることである。①につてはDNA抽出方法も確立し、極めて順調である。②③につては、学会発表も行うなど、研究成果も集積しつつある。③④については、計画通りデータが集積されつつある。⑤についても初年度において既に解析に成功した。30年度は⑥浮遊卵の捕食者の特定や減耗要因の解明を試みたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね計画通り進行しており、今後も①~⑥の特徴的中課題を遂行することで、閉鎖的水域におけるタイ科魚類の浮遊卵から、効果的に生態遺伝情報が得られると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が定価(予定価格)より、安価に入手できたため(キャンペーン中の価格で購入)。来年度は、最終年度のため、予算額を見据え、効率的な研究を実行する。
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