有用ホンダワラ類の増養殖を推進するため、季節的な限定と労力のかかる有性生殖を通じた種苗生産に代わり、室内培養下で観察された発生初期(初期葉)上の不定胚形成という特異現象(Yoshida et al.1999)を活用し、その機構を解明することにより新たな種苗生産法を提案することを目的とした。初年度(平成28年度)には材料としたホンダワラ類のうち、熱帯性のヒイラギモクにおいて、24℃以上で培養すると正常な形態形成が妨げられ、初期葉において高率で不定胚形成を誘導できることを明らかにした。29年度は不定胚形成の組織学的機構にアプローチし、初期葉の組織細胞のうち、髄層細胞に何らかの変化が起こって不定胚として分化し、発生が開始されることを明らかにした。 最終年度(平成30年度)は不定胚由来の個体が通常環境下で正常な成長を示して種苗として使用しうること、また不定胚由来の個体から新たに不定胚が誘導できる(拡大再生産)ことを明らかにして、種苗生産における効率性を試算した。現時点において安定的に不定胚を誘導できるのはヒイラギモクのみであるが、今後はヒジキや他の有用種においても研究を進め、新産業に繋がる有用ホンダワラ類の新たな種苗生産法を確立したい。
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