1)GFP強制発現バキュロウイルス:昨年度までに作成したGFP強制発現バキュロウイルス(GFP-Bac)に加え、トランスポゼースを発現するトランスポゼース発現バキュロウイルス(TP-Bac)を作製した。GFP-Bac単独またはTP-Bacとの複合ウイルスをウナギ腎臓由来EK1細胞にインフェクションしたところ、現在まで8カ月に亘って継代を繰り返しながらGFP発現が継続している。TP-Bac存在、非存在に関わらず、EK1細胞のゲノムにGFP配列が挿入されたことが示された。つまり、外来遺伝子のEK1細胞ゲノムへの挿入が可能であることが証明された。GFP-Bacをティラピア、ウナギ、チョウザメの肝臓、腎臓、卵巣、精巣、卵などの様々な組織培養においてインフェクション実験を行った。しかし、いずれの組織にもGFPの発現は認められず、生体そのものへの直接遺伝子導入は難しいことがわかった。 2)ウナギ濾胞刺激ホルモン(FSH)強制発現バキュロウイルスの作製:昨年度、AGプロモーター下流にウナギFSHのαおよびβ配列を連結した配列を、pFastBacに組み込んだコンストラクトを作製し、それをもとにFSH強制発現バキュロウイルス(eFSH-Bac)を作製した。これを哺乳類細胞HEK293F細胞にインフェクションしたところ、HEK293F細胞に毒性を示し細胞は急減した。EK1細胞にインフェクションしたところ、EK1細胞には毒性を示さず細胞は緩やかな増殖を続けた。2週間培養したところで細胞と培養液を回収し、抗ウナギFSH抗体を用いてウエスタンブロット解析を行なったものの、陽性バンドは認められなかった。ウイルスにするまえのFSH-pFastBacのトランスフェクションではFSHが産生されたことから、十分な量のウイルスが作製されなかったのではないかと考えられた。
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