魚類において、各種の行動を任意のタイミングで人為的に操作することができるようになれば、将来的に、水産増養殖や水産資源管理に大きく貢献する技術になり得ると考えられる。そこで我々は、行動を制御する特定のニューロンに、ニューロンの活性を上昇あるいは低下させることができる人工受容体を強制発現させ、そこに人工リガンドを投与すれば、魚類の各種行動を任意のタイミングで人為的に操作することが可能になるのではないかと考えた。そのような考えのもと、本研究では個体の生理状態や周囲の環境条件によらず、特定の行動を任意にオン・オフできるメダカ(Oryzias latipes)系統を作出することを計画した。昨年度までに、導入する人工受容体の種類や導入するDNAコンストラクトの構造、それらのDNAコンストラクトのメダカへの導入方法を再検討したが、その作業に時間がかかってしまったため、期間を1年延長し、引き続き本年度も、目的のメダカ系統の作出に取り組んだ。その結果、最終目標である特定の行動を任意にオン・オフできるメダカを作出するまでは至らなかったが、試行錯誤の末、ゲノム編集CRISPR/Cas9のnon-homologous end joiningベースのノックイン技術を用いることによって、ポジティブコントロールのDNAコンストラクトは、ある程度導入されるようになった。もう少し改良が必要だが、今後もこの技術を使って研究を進めていくことで、近い将来、目的のメダカ系統が作出できるようになると期待される。
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