研究課題/領域番号 |
16K14982
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 茂 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00224014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カロテノイド / 魚類 / 代謝 / 還元 / 酸化 |
研究実績の概要 |
魚類の体色発現に関与している代表的な色素であるカロテノイドには、様々な分子種が存在する。それらの代謝メカニズムは魚種により異なり、海水魚の多くは酸化的代謝を行うのに対し、ティラピアやアユ等の淡水魚には、還元的な代謝を行うものが存在する。カロテノイドの酸化的代謝に関与する酵素遺伝子については、細菌や植物においてその同定が行われている。しかし、カロテノイドの還元的代謝経路に関与する酵素に関する情報は、ほぼ皆無に等しい。そこで本研究では、魚類における還元的カロテノイド変換に関与する酵素遺伝子を単離・同定し、魚類における還元的カロテノイド代謝を分子レベルで解明するとともに、新規反応メカニズムを有する酵素に関する基礎的知見を得ることを目的とする。 前年度までにβ-カロテンあるいはアスタキサンチンを、それぞれ色素源として含む餌料をヒメダカに投与し、カロテノイドの酸化的代謝あるいは還元的代謝を行っている供試魚の作出を試みた。それぞれの飼育群の魚につき、前年度までに確立した手法により、カロテノイド組成を分析したところ、特にアスタキサンチン投与魚において、期待される色素組成となっていなかった。このことから、アスタキサンチンの投与法を再検討する必要性が示唆された。また、カロテノイドの酸化的代謝に関与すると考えられる、候補酵素遺伝子の取得をPCRにより試みたところ、得られた同一酵素のcDNAクローンの塩基配列には。若干の多様性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の様に、カロテノイドの還元的な代謝を行う生理状態となっている供試魚の作成ができず、酸化型の代謝を行っている魚とのRNA発現状況の比較解析を行うことができなかったため。アスタキサンチンの投与法について若干の改変が必要なものと考えている。また、カロテノイド代謝関連酵素遺伝子の取得に比較的時間がかかってしまった。これは今回用いたヒメダカが遺伝的に均一な集団で無かったことも一因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
アスタキサンチンにはβ-ヨノン環の4、4’位に関し、(R,R)、(R,S)、(S, S)の3種の立体異性体が存在する。魚類によるカロテノイドの代謝的還元系において、これらの立体異性体間で反応性に差があるかを考慮して、餌中に投与することを検討する。また、安定性を考慮して、遊離型では無く脂肪酸エステル体として投与することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までにカロテノイドの還元的代謝を行っていると考えられる供試魚の作成が出来なかったため、関連遺伝子の特定に必要なトランスクリプトームデータベースの作成を差し控えざるを得なかった。次年度には速やかに飼育実験を再開することで当該供試魚を作成し、トランスクリプトーム解析を行う予定であり、その費用を計上した。
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