研究実績の概要 |
腹ビレイルカを含め、イルカ細胞のリソースは限られているので、まずiPS細胞の確立の前段階としてイルカの繊維芽細胞培養技術の確立と不死化を行った。腹びれイルカ初代線維芽細胞を6well dish上で培養し、Blasticidin S耐性遺伝子を有する組換えレンチウイルスを用いて不死化因子SV40TおよびhTERT遺伝子を導入した。感染実験では単独あるいは混合ウィルス液を、量を調節し計6通りの条件を試みた。導入2日後にBlasticidin Sを添加して感染細胞を選別した結果、SV40T 発現レンチウイルス液1 mL、SV40TおよびhTERT 1 mL共感染条件下でBlasticidin S耐性細胞を得ることができた。これらの細胞は一般的なヒト線維芽細胞の分裂限界を超え、現在も分裂を行っている。さらなる性状解析のため、得られた細胞をシングルセルに単離し増殖曲線を作成したところ、これらの細胞は不死化因子導入前の線維芽細胞と比べて著しく増殖速度が上がっていることが分かった。さらに、これらの細胞からタンパク質を抽出しAnti-SV40T antigen抗体を用いてWestern blottingを行い、SV40Tの発現を確認することができた。これらの結果から、得られたSV40T導入細胞およびSV40T・hTERT導入細胞は不死化されており、腹びれイルカの細胞株の樹立に成功したと結論づけた。 次に、得られた細胞株を用いてエレクトロポレーション法によりヒト由来未分化誘導因子Oct3/4, Sox2, L-Myc, Klf4, Lin28遺伝子を共導入し、腹びれイルカiPS細胞の樹立を試みた。導入条件は1650 V, 10 msec, 3回および1300 V, 20 msec, 2回の2条件を試みた。導入1ヵ月後、これら2条件においてコロニー状の細胞集団が観察された。得られたコロニーに対して多能性マーカーであるアルカリフォスファターゼ染色を行ったところ染色を確認することができた。これにより、得られたコロニーは脱分化状態であるという可能性が示唆された。
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