研究実績の概要 |
前年度に確立した手法に基づいて腹びれイルカiPS細胞樹立の試験段階として不死化した腹びれイルカ線維芽細胞を用いてヒト由来未分化誘導因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28)の導入を行い、多能性マーカーであるアルカリフォスファターゼ染色で陽性反応を示すiPS細胞様細胞集団を得ることは再現できている。しかし、得られたiPS細胞様集団は継代および凍結保存・解凍後のフィーダー細胞への接着が著しく悪く、未だiPS細胞の樹立を確認できていない。このことに関しては、通常用いられる線維芽細胞ではなく不死化した線維芽細胞を用いているためコロニーの性質が異なっている可能性が考えられる。そこで、不死化した腹びれイルカ線維芽細胞に代わり腹びれを有さない通常のイルカの細胞を用いてヒト由来未分化誘導因子の導入を試みた。しかし、不死化した線維芽細胞から得られたようなiPS細胞様コロニーは観察できなかった。その理由として用いた線維芽細胞は細胞増殖率が悪くコロニーを形成する最適な細胞密度まで達しなかった可能性がある。今後はより細胞増殖効率の良い若いイルカの初代培養細胞を用い、未分化誘導因子導入時の細胞密度も考慮に入れたうえでイルカiPS細胞の樹立を試みる必要があると考えられる。同様に、ヒト由来未分化誘導因子がイルカiPS細胞樹立に適さない場合も考え、現在鯨類由来未分化誘導因子のクローニングを行っている。これまで用いてきた未分化誘導因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28)に加え、iPS細胞の作製効率を上げるため鯨類由来のHHEX/HLX遺伝子もクローニングを行い、クローニングが完了し次第イルカ線維芽細胞に導入し、最終目標であるイルカiPS細胞の樹立を目指し、引き続き研究を進める。
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