研究実績の概要 |
レイシガイの卵嚢形成器官(capsule gland)で見出された、ヨーロッパバイ貝のegg capsule protein(ecps, Wasko et al., macromolecules, 2015)のホモローグには4種類あり、2種がecp1ホモローグ, 他の2種がecp2/3のホモローグであった。興味深いことに、4種ともリジンの含量が10%以上と高いことが際立った特徴であった。リジン含量が高いことからリジン同士の架橋が卵嚢形成に関与すると想定し、レイシガイの卵嚢形成器官に特異的に大量に発現する酵素を探索したところ、1種のアミン酸化酵素が卵嚢形成器官特異的、かつきわめて大量に発現していることが判明した。このアミン酸化酵素はシグナルペプチド配列を有する分泌性タンパク質であり、銅結合アミン酸化酵素ドメインを有していた。 レイシガイは卵嚢形成時期に蝟集し、その周辺にはヒトデなどの姿はあまりみえない。そこで、レイシガイの卵嚢形成器官に特異的に大量に発現する遺伝子で、レイシガイの蝟集や他の生物の忌避に関連する可能性のあるタンパク質をコードする可能性のある遺伝子を探索した。その結果、Nagai, H and Namikoshi, Mが報告したヒトデのrepellent protein(BAL43194.1, ヒトデ(Solaster dawsoni)が生産し、他のヒトデ(Asterina pectinifera)の忌避行動を引き起こすタンパク質)と高い相同性を有するタンパク質(レイシガイ卵嚢形成器官特異的ヒトデ忌避タンパク質相同タンパク質)をコードする遺伝子を見出すことができた。レイシガイ卵嚢形成器官特異的ヒトデ忌避タンパク質相同タンパク質は、N末端にシグナルペプチド配列を持ち、TECPRドメイン(Beta propeller domein)を5個有していた。
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