研究課題/領域番号 |
16K14990
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
冬木 勝仁 東北大学, 農学研究科, 准教授 (00229105)
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研究分担者 |
高篠 仁奈 東北大学, 農学研究科, 助教 (80507145)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農免疫 / 豚肉 / 乳酸菌 / 消費者 / 選択実験 / 食の安全・安心 / ブランド |
研究実績の概要 |
近年、世界の国々で食の安全への関心が高まっている。東北大学では「食と農免疫国際教育研究センター」が設立され、より安全な食品を供給するため、生物が本来持つ免疫機能(農免疫)の活用に向けた研究が進められている。本研究では、開発された「農免疫」技術の社会実装に向けて、新技術の消費者・生産者への普及方法と、市場構造におよぼす影響を明らかにする。これにより、農畜水産物等の健全育成とフードセーフティーシステムの創出を目指す。 平成28年度は、生産者・消費者の分析を行うための準備として、自然科学系の研究協力者との議論や文献調査に基づき、分析対象とする農免疫技術の候補を決定した。対象とした技術は、乳酸菌の活用により薬剤投与や遺伝子操作を行わずに生産した豚肉(以下、「乳酸菌豚肉」)である。web調査を利用し、通常の生産方法と比較した際の、この豚肉に対する消費者選択実験を実施し、条件付きロジットモデルによる分析を行った。 その結果、食品全般及び豚肉の選択時に「最重要視すること」、生産方法に対する「不安度」とそれぞれの交差効果で有意な結果が得られ、消費者の「乳酸菌豚肉」に対する受容度は高いことが明らかになった。特に、食品全般及び豚肉の選択時にブランドを重視する消費者ほどその傾向が顕著であった。それゆえ、「乳酸菌豚肉」は一種のブランドとして認識されることが推測された。また、通常の生産方法に不安を抱く消費者ほど「乳酸菌豚肉」を選択する傾向が強いことも示され、「安心感」をイメージさせるブランドとして意識されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定より消費者に対する調査・分析は進み、論文として取りまとめ、投稿準備段階にまで至ったが、生産者に対する調査は行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にやり残した生産者調査を重点的に行うとともに、既に取りまとめた論文の内容を9月に予定されている国際シンポジウムで発表し、学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、選択した対象技術の特性に合わせ、消費者に対するweb調査のサンプル数、質問項目を増やしたため、分析結果の析出と検討に予定よりも時間を費やした。そのため、予定していた東北地域の農漁村における生産者調査を行うことができず、予定していた調査旅費が執行できなかった。その分次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予備調査までの予定であった消費者調査について、本調査まで行うことができたため、次年度使用分は東北地域の農漁村における生産者調査のための旅費、消費者の一般的消費動向把握のためのPOSデータの購入、データ整理・分析の補助に対する謝金、成果報告に関する旅費、論文執筆時の英文校閲等に使用する。
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