本研究では,1990年以降のわが国おける農地利用の実態を明らかにした。全国的な農地貸借率と耕作放棄地面積率はこの間上昇しているが,横断面(都道府県レベル)では負の相関が現れ,その度合いが年々強まっている。計量分析の結果,貸借率の上昇に貢献しているのは,農地の供給面では土地持ち非農家の増加,需要面では農家以外の農業事業体(集落営農や法人組織経営体)の躍進であることが判明した。また,農地取引の仲介組織(現在の農地中間管理機構)も貸借率の上昇に寄与している。一方,耕作放棄地率が上昇した最大の原因は,土地持ち非農家の増加であり,その抑制に寄与しているのは,農家以外の農業事業体の農地借入であった。
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