本研究は、個人所有の養魚池が非常に多く存在するバングラデシュの水稲二期作地帯を対象とし、地下水資源、養魚、稲作に関する持続的な最適戦略の導出を試みるものである。研究代表者と研究協力者は、2018年度には2回、バングラデシュへ渡航した。 具体的な対象地域は、ジャマルプル市近郊に設定した重点集落と不圧帯水層をコモンズとして共有する範囲である。3箇所の水位・水温観測井、ならびに、2箇所のパルスロガー付き転倒マス型雨量計を運用した結果、その範囲が明らかとなった。そして、重点集落の人工貯水池12基、ならびに、その他のいくつかの水体について、水質各項目、構造諸元、利用目的、所有・管理形態、棲息する生物などを調査した。12基の人工貯水池のうち、養魚をもっぱらの目的とする1基に着目し、水位、水温、溶存酸素の自動観測を含む重点的な水質調査、およびに、冬季に地下水を導入してインド亜大陸における代表的な食用コイ3 種を栽培する実験を行った。対照地区として設定した滋賀県甲賀市の今郷地区においても、自動観測を継続し、2018年度内に9回の現地調査を行った。 以上のフィールド調査にもとづき、(1)養魚池水質の日周期動態に関するシステム解析および今郷地区の溜池との比較、(2)養魚池を運用する管理者レベルの意思決定支援に対するロバスト最適化理論の適用について、学術論文として公表した。また、(3)灌漑用ポンプと土水路による水田と人工貯水池への地下水配水システムに関し、開水路水理学と微分方程式論にもとづき、定常状態間の遷移について検討した。その結果を、大学院生が2018年11月に奈良市で開催されたPAWEES国際会議で口頭発表し、さらに、修士論文としてとりまとめた。
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