研究課題/領域番号 |
16K15010
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小出 章二 岩手大学, 農学部, 教授 (70292175)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 青果物 / 氷点下保存 / 過冷却 / 電気インピーダンス / 細胞活性度 / 脱水 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、①青果物組織の生存率の測定法の開発と、②青果物組織の生存率を保つ脱水・冷却・復水方法を検討した。 はじめに、青果物(キャベツを中心とした葉菜類)をディスク状に成型し、生鮮試料と脱水・凍結によって傷害を受けた試料を用意して、これらの試料の細胞活性度を植物生理学的手法(TTC還元法)により計測し、あわせて電気インピーダンス計測を行った。その結果、TTC還元法は脱水・凍結傷害による試料の生死の状態を定量的に表現することができた。また電気インピーダンス計測により得られた生鮮試料のレジスタンスとリアクタンスのベクトル軌跡は円弧(Cole-Coleプロット)を描き、このことから試料の細胞膜健全性が確認できた。本研究では、この円弧の頂点座標を基軸として、脱水・凍結傷害を受けた試料の頂点座標リアクタンス比を、レジスタンス比と細胞活性比に対してプロットしたところ、それぞれ傾きが1に近い直線で近似できた。以上より、電気インピーダンス計測は脱水・凍結傷害を受けた青果物の生存率を定量的に表現できることが示された。次に②に関して、サンプルを種々の条件(温度、脱水率)のもとで脱水させ、脱水後試料の生存率を計測した。その結果、脱水温度25℃以下で生存率・サンプルの性状が良好であることが示された。冷却方法は、急速凍結(ブライン凍結)が試料の生存率を保持することを確認した。また、水分活性1.0に保ったペーパータオル(温度25℃)を用いることで、生存率を保ったまま試料の緩慢吸水を可能とした。 平成28年冬からは、キャベツ試料および脱水したキャベツ試料を急速冷却後、過冷却状態で一定時間(氷点下)保存した。その結果、両試料は保存温度の影響があるものの比較的高い生存率を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、①青果物組織の生存率の測定法開発と、②青果物組織の生存率を保つ脱水・保存・復水方法の検討を行うことを目標とした。現時点で、①に関して電気インピーダンス法により脱水・凍結傷害を受けた青果物の生存率が定量化できることを確認しており、②に関しても生存率を保つ脱水・(氷点下)保存・復水方法を考案した。よって、研究は順調に進展していると判断する。 但し、岩手県では冬季は毎晩氷点下となるため、市販の青果物を入手した時点で、その青果物が流通過程で凍結傷害を受けていたことも多々あった。今後は、測定時期を考慮して研究を進めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、各プロセス(脱水・氷点下保存・復水)が青果物組織の生存率に与える影響を詳細に検討するとともに、実用化を考慮して脱水時の脱水速度や復水時の復水速度を反応速度論的に検討する。また測定に供試する青果物の品目を増やし、品目にあった脱水・保存・復水方法を検討するとともに、電気インピーダンス法が脱水・氷点下保存・復水後のサンプルの生存率の計測に適用できるか確認する。これをもとに、氷点下保存(過冷却状態での保存)が容易な青果物と、容易でない青果物の違いについて検討する。併せて、本研究で設けた仮説「脱水を前処理とすることで、青果物組織を生きたまま氷点下で保存し融解できる」ことが可能であるか、測定・検証を重ねる。仮説が検証できれば、脱水後青果物の凍結回避の作用機序の解明を行い、青果物の凍結に関しての学術深化を図る。仮説が検証できない場合は、青果物組織を生きたまま、過冷却状態でどの温度でどの程度(時間)保存できるのか、その基礎データを収集する。 以上の結果から、青果物を生きたまま氷点下保存する技術の開発とその作用機序をまとめて、学会等で公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入する予定であった測定機器を一時的であるが借用することができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記装置の借用期間が終了し、測定に支障をきたす恐れがあるため、当該装置の購入費用に充てる。
|