研究課題
昨年度までに、本課題の申請時に設けた仮説「脱水を前処理とすることで、青果物組織を生きたまま氷点下で保存できる」に関するデータを収集したが、測定結果を考察すると、前処理として脱水をしなくても保存条件が良ければ「青果物組織を生きたまま氷点下で保存できる」可能性が示唆された。そこで平成30年度は、葉菜類をキャベツ以外に他の青果物も供試材料に加え、前処理として脱水をしていない青果物の氷点下保存の可能性について検討した。具体的には、①サンプルに熱電対を挿入し氷点下保存中に過冷却の解消に伴う潜熱放出の有無を確認、②凍結点と過冷却点の測定、③電気インピーダンス計測法により得られたCole-Cole プロットの円弧の有無から試料の細胞膜状態を検討、④植物の凍結による生死判断に関する生理学的評価法の一つであるTTC還元法を用いて細胞活性を評価、について測定・検討した。その結果、保存温度-5℃において、サンプルに用いた青果物は過冷却状態であったこと、また過冷却保存後の試料の細胞膜状態と細胞活性を電気インピーダンス計測法およびTTC還元法を用いて評価した結果、ほとんどの試料において、細胞膜の閉鎖性が保たれ細胞活性を有することが示された。しかし過冷却保存は試料の細胞膜状態を変化させ、細胞活性を低下させることも示唆された。脱水を前処理としたサンプルも同様の結果を示した。以上より本研究では、氷点下保存でサンプルが生存できた要因は「過冷却状態が保持されたことによるもの」であることを確認した。なお、生存の定義については今後十分検討する必要があるが、本研究ではサンプルの細胞膜の閉鎖性が保たれており、かつ細胞活性を有することと同義であるとご理解頂きたい。
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Acta Horticulturae
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