研究課題/領域番号 |
16K15012
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
児玉 昭雄 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30274690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農業工学 / 吸着 / 園芸作物 / 植物 / 再生可能エネルギー / 除湿 / 光合成 |
研究実績の概要 |
本研究で提案する二酸化炭素施用技術は,温室内外の温度差と湿度差によって生じる二酸化炭素の吸脱着現象を利用し,大気中の二酸化炭素を1000ppm程度に吸着濃縮して温室内に供給するものである.初年度に水蒸気共存下でも二酸化炭素能を示す炭酸塩担持ロータを試作して性能評価を行ったところ,二酸化炭素除去能が経時的に低下する減少が観察されたため,その原因究明を先行することにした. 吸着温度,二酸化炭素濃度,絶対湿度をそれぞれ25℃,1000ppm,10g/kgDAの雰囲気で炭酸カリウムの熱重量測定を行った.まず,400℃まで昇温して炭酸カリウムの初期重量を確定した後,吸着温度まで降温し重量変化を調べた.初期重量を1とすると,この条件での重量増加は1.19であったが,二酸化炭素濃度を20%に上昇させたところ,重量は1.41にまで増加した.これは,それぞれ炭酸カリウム1.5水和物,炭酸水素カリウムの重量に相当する.これより二酸化炭素濃度が希薄なときには炭酸カリウムの水和反応が主となり二酸化炭素除去量が少なくなる. 熱重量測定において,二酸化炭素濃度1000ppm,絶対湿度10g/kgDAの条件で400℃再生と40℃吸着を複数回繰り返したとき.炭酸カリウムと炭酸水素カリウムのどちらを開始物質とするかによって重量変化の挙動が異なることを見出した.初期物質が炭酸カリウムであれば,収着量は大きく,吸着-再生サイクルの進行に伴う性能低下もない.一方で,炭酸水素カリウムの脱水・脱炭酸から開始すると重量変化は徐々に小さくなった.ここで,この炭酸水素カリウムを粉砕して再実験を行うと二酸化炭素吸収能が回復した.ロータ基材に含まれる酸化アルミニウムと炭酸水素カリウムが反応して不活性物質KAl(CO3)(OH)2が形成されるとの報告があるが,結晶形の変化が二酸化炭素除去能の低下に影響するものと結論付けた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
炭酸塩の利用を目論んだが,その結晶性の維持が最重要であることが判明した.そのための検討を新たに進める必要が生じた.また,ゼオライトおよび活性炭の詳細評価をあらためて実施することにした.
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今後の研究の推進方策 |
1)炭酸塩ロータの開発と二酸化炭素吸着材の探索 炭酸塩を二酸化炭素吸収材とする場合には,結晶形状の変化をいかに抑制するかが鍵となる.現在のところ,担持性の良さから炭酸水素カリウムが最有力な担持材料の候補である.炭酸化・脱炭酸反応の前後で,その結晶形状が維持できる基材特性の検討を進める必要がある.その一方で,ゼオライトや活性炭など当初利用を想定していた吸着材料の検討を再開する.さらには,新たな二酸化炭素吸着材料の探索(既に候補あり)を進め,その基礎特性評価を行う.具体的には,温湿度および二酸化炭素濃度スイングに対する吸収・放出レスポンスを詳細に調べる.数学モデルで最重要となる物質移動係数の推算根拠とするため,操作・装置変数および空気条件をそれぞれ独立して変化させて,系統的なデータ収集に努める. 2)小規模実験機による二酸化炭素吸着濃縮性能の把握 ゼオライト,活性炭担持ロータの性能評価試験を進める.ロータ出口に形成される二酸化炭素濃度・空気温度・湿度分布もあわせて計測し,ゾーン分割による二酸化炭素濃縮効果の増強を検討する. 3)数学モデルの構築と数値計算による最適化・高度化検討 実験結果に基づいた数学モデルを構築する.この数値計算を用いて,吸着材ロータ仕様や装置・操作の最適化を図り,プロセス構成の高度化指針を示す.
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