供試虫として貯穀害虫のヒラタコクヌストモドキ(以下ヒラタ)、カキ等に寄生するフジコナカイガラムシ(以下フジコナ)を用いた。ヒラタについては、円柱高電圧電極と同心の円筒接地電極間にヒラタを置き実験を行った。また、フジコナでは、平行平板電極間にフジコナを寄生させたカキを配し電圧を印加した。 ヒラタの試験は初年度に成虫、今年度に幼虫を供試した。成虫では電圧波形、電圧、周波数を変化させて実験を行い、矩形波、20kV、500Hzで高い死虫率を得た。この条件で、4日後に死虫率は100%に達した。幼虫でも同条件で試験を行い、電場曝露時間の増加につれて死虫率は大きくなるが、完全殺虫には5日を要した。また、4日間電場に曝露した玄米は対象と比べ発芽率・発芽勢は同等、水分は高圧電極付近が0.3%低下、脂肪酸度は0.4%増加したが、接地電極付近では対照区と同等であった。電場曝露中に接地電極付近の幼虫が同電極に引き寄せられる現象が見られた。帯電した幼虫がクーロン力で引き寄せられていると考えられ、接地電極と接したときの放電により死に至っている可能性があり、今後究明の必要がある。 フジコナでは正・負の直流電圧を印加した。電圧は±5、±10、±20kVとした。死虫率は電圧、処理時間とともに増加し、初年度の試験では-20kV、8時間処理で100%に達したが、今年度の確認試験ではフジコナの成長が十分でないためか、8時間処理では死虫率は33%程度で、96時間の印加でも90%であった。初年度の8時間曝露ではカキの質量、色彩、硬さ、Brix値に変化はなかった。さらに、COMSOL Multiphysics 5.2aを用い、+10kVを印加した際のカキを配したフジコナ実験装置電極間及び電極近傍の電場強度をシミュレーションにより求めた。その結果、カキ果実上方で電場強度は強いが電位は2kV程度となることが明らかになった。
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