研究課題/領域番号 |
16K15015
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
玉置 雅彦 明治大学, 農学部, 専任教授 (20227268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 根域照射 / LED |
研究実績の概要 |
根域への異なる光質のLED光照射がコマツナの生育に及ぼす影響を検討した。コマツナ種子を明期/暗期を12h/12h、温度20℃、RH80%条件のグロスチャンバー内で育苗した。その後、1/2単位濃度の培養液上の発泡スチロールに定植した。栽培は200×200×200(mm)のガラス製水槽で行った。エアレーションは行わず、室温20℃、水温20℃の条件で栽培した。地上部は、PPFDを発泡スチロール上面で150μmol/m2/s、明期/暗期を12h/12hに設定した蛍光灯を用いて照射した。根域への照射処理は水槽底面の外側から行い、青色(473nm:B区)、赤色(635nm:R区) 、緑色(525nm:G区)または黄色(590nm:Y区)光をLEDを用いて照射した。根域へのLED光照射は、ウレタンマット底面で各色ともにPPFDが10μmol/m2/sになるようにした。対照区は根域非照射(C区)とした。定植後21日目に栽培を終了した。 地上部新鮮重は、R区がC区よりも有意に重かったが、B区、G区、Y区はC区と有意な差異は認められなかった。地上部乾物重もR区で最も重かった。根乾物重もR区が他処理区よりも有意に重かった。コマツナ根域へ赤色光を照射することで、非照射よりも地上部の生育が促進されることが明らかとなった。R区では総根長、表面積、平均根径がC区よりも有意に値が大きかった。B区では体積および平均根径が処理区間で最大であった。R区では総根長と根表面積がC区よりも有意に大きい値を示したことから、根域への赤色光照射が非照射よりも根系を発達させることが認められた。また、B区で総根長がC区と有意な差異が認められないにもかかわらず体積はC区よりも大きいことは、平均根径がC区よりも大きいことが要因であると推察された。地上部クロロフィル含量は、全ての処理区間で有意な差異は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究から、根域の光環境を制御することで根系の発達だけではなく、地上部生育にも影響を及ぼすことが明らかとなった。根域の光環境については、その有用性が現在まで検討されていなかったが、根域への赤色光照射が非照射よりもコマツナの地上部生育を促進させることが明らかとなった。また、根域への赤色光照射で根乾物重が重くなったことから、根域への赤色光照射が非照射よりも根系を発達させることが認められた。葉内クロロフィル含量には処理区間で差異がなかったことから、赤色光照射では葉の光合成が活発となり地上部の生育が促進されたのではなく、根系への赤色光照射により根系が発達した結果、地上部の生育が促進されたと推察された。 根域への赤色光照射が、コマツナの地上部のみならず根の生育促進に関与することを明らかにできた。しかも、ル-トスキャナ-を使って詳細に根の形態を検討したこと、さらに葉のクロロフィル含量にも影響を及ぼすことを明らかにできたことから、従来の研究の裏付けデータが取得できた。したがって、研究は予定通り、おおむね進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
根域への赤色光照射によりコマツナの生産性が向上することから、養液栽培における根域への赤色光照射栽培が、生産性向上のための新たな栽培技術と成り得ることが明らかとなった。今後は、他の葉菜類や果菜類でも、コマツナと同様に根域照射により生育促進効果が得られるのかを検討する必要がある。さらには、植物体内の成分等との関係についても明らかにする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
238円と極めて少額しか残らなかったため、消耗品の購入に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
238円分を、翌年の消耗品購入に組み入れて使用する計画である。
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