本研究では心循環器系が高次の強制入力非線形力学系であることに着目し、線形解析とカオス解析の融合による心電-脈波同時計測信号の解析手法を提案することを目的としている。特に、心電と脈波を同時計測することによって、入力としての心電と出力としての脈波としてこれらの相互関係に着目した。心電-脈波計測を実施し、座位安静状態の被験者に対してウェアラブル生体センサ(心電信号および脈波)と指尖脈波計を装着して心電信号と脈波信号を計測した。ウェアラブルセンサと指尖脈波の計測間隔がことなるため補間を行うことでこれを補正した。心電信号のパルス間隔を利用して脈波のポアンカレ断面を生成した。当該手法によって、脈波のみから生成した場合よりもよりもゆらぎが少なく、より鮮明な構造を観測することができた。また、心電および脈波ともにヒルベルト変換による位相検出からポアンカレ断面の検出精度を向上することができた。一般的な時間遅れ埋め込みでは、基本周波数の数分の1を時間遅れとして設定するが、心電についはQS間隔に着目し、その1/4に時間遅れを設定することによって、心電による明瞭なダイナミクスが再構成された。このために、推移誤差、正規化決定論的非線形予測などの非線形時系列解析手法が適用可能となり、高い決定性の存在を検出することができた。 一方、心電-脈波を対象に開発した位相同期抽出法の汎用性を明らかにした。RGB画像列、アレルギー花粉飛散量、感染症時空間分布などのメタデータに対しても有効であった。
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