研究課題/領域番号 |
16K15018
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
本間 知夫 前橋工科大学, 工学部, 教授 (80242246)
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研究分担者 |
門屋 利彦 前橋工科大学, 工学部, 教授 (40551875)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光照射 / 根 / チャ / 挿し木苗 / 生体電位 / 呼吸活性 / キャベツ / 水耕栽培 |
研究実績の概要 |
平成29年度もこれまでに実施した実験を繰り返して行った。すなわち、チャ挿し木苗の水耕栽培時、LEDにより根に光照射(波長:赤・緑・青、対照は遮光、強度:30μmol/m2/s)を行いながら生体電位を計測し、生育(発根・伸長、地上部の生育)や電位値の推移に及ぼす影響を調べた。その結果、生育等に対する影響はハッキリとしなかったが、電位変化についてはこれまでと同様、照射した光の波長に依り電位値の推移が異なり、根の機能の違いを反映していると思われた。この実験で得られた白色根を冷凍保存し、タンパク質を抽出して電気泳動を行い、光受容蛋白質として知られるフォトトロピンの抗体を用いてその発現を調べたが、タンパク質の抽出・精製が依然としてうまく行えておらず、照射する光の波長による発現の違いなどは見出せていない。 地上部に照射した光が発根状況等に及ぼす影響を調べるため、6月にチャの挿し木(今年度はやぶきたの他におくはるかを加えた)を行った後、地上部に光(波長は赤、緑、青、最大強度は75μmol/m2/sに揃えた)を連続照射(対照は屋外)し、3ヶ月後に苗を掘り上げて発根状況を比較した(各処理区30本ずつ)。総根長を解析するソフトを導入したが問題があり、解析はまだ実施していない。苗の一部は掘り出してすぐにTTC法で根の呼吸活性を測定した。屋外の個体に較べて、LED照射した個体はいずれも光強度が弱かったためか活性は半分程度であった。しかし青色照射したおくはるかは屋外の苗と同程度の高い活性を示した。苗の状態も良好で、光に対する反応性に品種間差があると思われた。 冬期にはキャベツ苗を使い、地上部への光照射が根の呼吸活性(TTC法)に及ぼす影響を調べたところ、青色照射が遮光に較べると1.5倍強の活性を示した。 これまでの結果から、青色照射が根の活性を上げる効果が高いと思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度より問題になっている、所属機関における実験材料を準備したり実験を実施するためのスペース等の確保が困難なこと、日常の業務や他の研究との関係から本研究課題に割く時間がかなり限られてしまっていることなどの理由により、実験をコンスタントに繰り返して行うことが難しく、また樹木を扱うためにその年の気象条件にも実験結果が左右されてしまう、ということで、着実なデータの蓄積がなかなか出来ていない。当初の予定では、最初に2年間で光に対する樹木根の応答(生理機能の変化)を明確に示す条件を見出し、その条件下で根の生理機能を人為的に変化させる(制御する)ことで、樹木の生育制御・個体管理につながる技術にしたいと考えていた。進捗が遅れているとはいえ、ハッキリではないものの、光条件により根の機能が変化する現象は繰り返し得られていることから、引き続き何とか研究を進捗させるべく努力しているところである。 また昨年度よりクワの挿し木苗、種子苗を使った水耕栽培が可能となり、チャよりも大量の白色根が得られることから、最終年度は材料を使い分けて実験を進めることで、特に生化学的アプローチの実験にも今まで以上に材料提供が出来ると思われる。 加えて、本研究でも必要である根系活性の評価については、特に個体レベルで調べる良い方法がないのが現状であり、その中でも比較的使えそうなTTC法について、根系全体に適用すべく条件の検討を進めているところである(ただしこの場合は草本植物を使用して実施)。これら付随的な研究も最終的には本研究課題を進捗させるためには重要になってくると考えている。 これらを総合的に考えて、研究進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況に影響を与えているスペースの問題に加えて、平成30年7月末から約2ヶ月間、研究代表者が利用しているハウスに隣接する実験棟の取り壊し作業が行われ、ハウスが工事区域に入るため、実験に大きな支障が出ることが判明した。加えて、光照射のための灯具を提供して頂いている企業担当者が平成30年7月末で定年を迎えるため、灯具の貸与や研究協力関係についてもこれまでとは変わることが必然となっている。しかしこれら問題については、実験材料、条件を選び、本研究課題の進捗への影響を最小限に抑えるべく、対応策を協議しながら進めているところである。 これまでの研究の蓄積から、チャを利用する実験は進めるが、白色根を大量に得ることが出来るクワについても実験に利用していく予定である。チャにおける光照射の反応性に品種間差があることが判明し、さらにチャとクワの違いなどについても知見が得られれば、光による樹木根系機能の制御を考える上でも、そして光と根の関係について、今後さらに発展的に研究を進めていくことが期待される。生化学的アプローチの実験について、チャの場合はカテキンなどのポリフェノール類が多く含まれていることがタンパク質抽出の妨げの要因になっていてうまくいかないと思われるが、平行してクワの根からのタンパク質抽出を試みる予定である。
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