本研究課題は、地下部にあって見えない根の機能を、地上部や根に対する光照射で制御し、個体状態の維持管理等に応用することを目指し、そのための基礎的知見を得ることを目的として実施したものである。材料としてチャの挿し木苗、チャが利用出来ない時期はキャベツ苗を利用し、LEDによる光照射を行い(波長は赤・緑・青・白、対照は遮光、強度は根に直接照射する場合30μmol/m2/s、地上部に照射する場合は75μmol/m2/sに設定)、生体電位や呼吸活性の測定、総根長の計測、根におけるタンパク質発現などを調べた。 根系の呼吸活性は、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)の還元反応から生じるフォルマザン量を定量して評価する方法(TTC法)を、根系全体に適用出来るようした。光照射をチャの挿し木苗(照射時間は6時間・10時間・24時間)、キャベツ苗(照射時間は3時間・6時間)に対して行ったところ、いずれの苗においても、波長により呼吸活性の大きさは異なり、緑色光で一番大きい活性を示した。一方、チャの生体電位を測定しながら根に直接光を照射した場合、青色光を照射した個体において一番大きな電位の変動値が得られた。 チャの枝から作った挿し穂(二葉二節、根は無い)を土に挿すと同時に、光照射を連続的に長期間行い(3から6ヶ月間と年により異なった)、発根状況を総根長を調べることで比較した。全ての年のサンプルの解析が終わっていないためまだ結論は出せないが、初年度の実験では赤色光照射の苗の総根長が他よりも大きかった。 チャの根における光受容タンパク質の発現状況の解析については、タンパク質の抽出・精製が難しく、本研究期間を通して波長によるタンパク質発現の違いを見るには至らなかった。 樹木根系機能が照射光の条件により異なることを見出したが、まだ実施すべき実験、課題が多く残っており、引き続き研究を継続する。
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