ヒツジ2頭(ルーメンカニューレ装着)に、前年度試験で選抜した水溶性酢酸セルロースを、同じく前年度特定した最適添加レベル(全飼料の10%)で濃厚飼料に混合し給与した。飼料は乳牛の飼料構成を意識し、粗濃比を3:1に設定しつつ、体重の増減のない維持レベルの給与とした。これは給与期間をとおしてルーメン発酵や微生物相の安定化をはかることで、処理の影響を明確にするためである。まず、全頭をセルロースパウダー添加飼料で3週間飼育し(対照期)、その後、酢酸セルロース添加飼料に切り替え、3週間飼育した(試験期)。これを2回反復した。 各期最終週の最後2日間に、全ヒツジから経時的にルーメン液を採取するとともに、ナイロンバック法にて飼料消化率を測定した。ルーメン液は発酵産物と微生物相の分析に供し、データをもとに酢酸生成促進の検証とそのメカニズムの推定を行った。微生物、とくに各種細菌群の変動を定量的PCRでとらえることで、酢酸生成増加の機序を推定しようとした。 乾物消化率とルーメン内アンモニア態窒素濃度に酢酸セルロース給与の影響はなかった。対照期に比べ、試験期の給与3時間後において、ルーメン内pHが低くなり、総短鎖脂肪酸濃度、とくに酢酸濃度が増加した。ルーメン内の総菌数は変化なかったが、酢酸セルロース給与によりPrevotella属、Prevotella ruminicolaなどが増加、Butyrivibrioグループが減少した。以上から、水溶性酢酸セルロース給与はめん羊の消化に負の影響を及ぼすことなく、ルーメン内の酢酸増加を引き起こすこと、それにはPrevotella属細菌が関与しているらしいことがわかった。
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