研究課題/領域番号 |
16K15021
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
麻生 久 東北大学, 農学研究科, 教授 (50241625)
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研究分担者 |
北澤 春樹 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10204885)
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10708001)
渡邊 康一 東北大学, 農学研究科, 助教 (80261494)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セロトニン / 褐色脂肪細胞 / THP1 / エネルギー代謝 / 抗肥満作用 |
研究実績の概要 |
セロトニン生合成律速酵素(THP)は中枢と末梢で異なる染色体にコードされ、末梢のセロトニンは血液脳関門を通過できず、生体内のセロトニンは中枢と末梢で独立に制御されて機能も異なる。我々は、腹腔内へのセロトニン投与が高脂肪食摂取マウスの脂肪蓄積量を制御して体重増加を抑制する抗肥満作用を有することを発見した。しかしながら、セロトニン投与による抗肥満誘導機構は未だ解明されていないのが現状である。 褐色脂肪細胞のセロトニン受容体は5-HT1から5-HT7の7種類のサブファミリーからなり、14個のサブタイプの存在が報告されているが、樹立した褐色脂肪前駆細胞株(MBP細胞)では3A、5A、5Bを除いた11種類の受容体が発現していることが明らかとなった。 8週齢マウスを用いて、セロトニン投与30分前に4種のセロトニンレセプターアンタゴニストをそれぞれ投与し、単回投与において有意にPGC-1α-bとPGC-1α-cの発現上昇が確認されているセロトニン投与120分後に褐色脂肪組織を採材し、PGC-1α-bとPGC-1α-cの遺伝子発現を解析した。使用したアンタゴニストは、Methysergide(セロトニンレセプター1、2、7)、SB-269970(セロトニンレセプター7)、Ketanserin(セロトニンレセプター2A)、SB-204741(セロトニンレセプター2B)の4種である。結果、セロトニン投与によるPGC-1α-bとPGC-1α-cの発現上昇は、MetysergideとSB-269970の前投与によって有意に抑制された。以上より、褐色脂肪組織においてセロトニンは、セロトニンレセプター7を介してPGC-1α-bおよびPGC-1α-cの発現を上昇させることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
褐色脂肪細胞のセロトニン受容体は5-HT1から5-HT7の7種類のサブファミリーからなり、14個のサブタイプの存在が報告されているが、褐色脂肪細胞にはセロトニン受容体はでは3A、5A、5Bを除いた11種類の受容体が発現していることが明らかとなった。褐色脂肪組織の活性化において、セロトニンはセロトニンレセプター7を介してPGC-1α-bおよびPGC-1α-cの発現を上昇させることが判明した。これらの実験結果によって、複雑なセロトニンシグナルをレセプター7を中心に解析する事が可能となり、研究を今度推進していく上で有用で有る。
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今後の研究の推進方策 |
1)セロトニン合成酵素ノックアウトMBP細胞の作出 TALEN法は、DNA塩基に対応したTALE配列が特異的に目的の遺伝子に結合し、C末端エンドヌクレアーゼが目的部位を切断して欠損遺伝子を作り出す方法である。MBP細胞を用いて、TALEN法によるセロトニン合成酵素(THP1)遺伝子ノックアウト細胞を樹立する。セロトニン処理による褐色脂肪細胞で作動する遺伝子群解析に加え、THP1欠損がUCP1活性化に及ぼす影響の解析が可能となる。 2)THP1ノックアウト細胞を用いたUCP1活性化関連遺伝子群の比較解析 樹立したTHP1ノックアウト細胞の機能は、UCP1蛋白の増加を野生型細胞と比較解析し、セロトニン受容体の発現を確認する。次に、セロトニン刺激によるUCP1活性化増強の確認を行い、UCP1遺伝子発現が有意に増加してくる時期を特定し、遺伝子抽出のタイミングを決定する。セロトニンの無刺激細胞群と刺激細胞群よりmRNAを抽出し、遺伝子的な変化を詳細に解析すると共に、マイクロアレイ解析を行ってUCP1活性化にかかわる遺伝子群を絞り込む。 3)UCP1活性化を誘導する鍵遺伝子の特定 野生型およびTHP1ノックアウト細胞の解析結果を元に、それぞれの実験系でUCP1活性化において共通している遺伝子群を絞り込み、UCP1活性化の鍵遺伝子の特定を行う。候補遺伝子を発現ベクターに組み込み、野生型褐色脂肪細胞に導入してUCP1蛋白の増加を解析し、UCP1活性化を誘導する鍵遺伝子を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に経費を使用した結果、予想以上に経費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度実施予定のノックアウト細胞株の作出に関する研究の消耗品に充てる予定である。
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