研究課題/領域番号 |
16K15024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松井 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (40181680)
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研究分担者 |
友永 省三 京都大学, 農学研究科, 助教 (00552324)
白石 純一 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 助教 (50632345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 廃鶏 / 肝臓 / 脂肪肝 / メチオニン / コリン |
研究実績の概要 |
本課題では、成長抑制を考慮する必要がない廃鶏において、メチオニンならびにコリン摂取制限を介したリポタンパク質産生抑制により、肝臓で産生されたトリアシルグリセロールを肝臓内に封じ込めることで増加させ、効率的に短期間でフォアグラに匹敵する高度脂肪肝を生産させる技術開発を目的とした。 24羽の白色レグホン種の廃鶏を3区(n=8)に割り当て、メチオニン含量とコリン含量(mg/100g)がそれぞれ0.18%と16.5mg/100g、0.22%と18.7mg/100gまたは0.28%と21.0mg/100gの飼料を5週間にわたり給与した。 どの区においても試験期間中に体重は減少したが、体重変化に用量反応は認められなかった。したがって、この体重減少はメチオニンならびにコリン不足によるものではないと考えられた。血漿中遊離コリン濃度は、すべての区間で有意な差は認められなかったことから、要求量を下回ると考えられるメチオニンとコリン摂取にもかかわらず、充分量のコリンが産生されていたことが示唆された。 肝臓重量、肝臓中総脂質量、コレステロールならびにトリアシルグリセロール含量は各区間で差が認められなかった。腹腔内脂肪重量にも各区間で差は認められなかった。血漿中遊離脂肪酸濃度、トリアシルグリセロール濃度、コレステロール濃度にも差は認められなかった。また、どの区の個体の肝臓でも脂肪滴など脂肪肝を示す組織像は認められなかった。これらの結果から、本試験で用いたメチオニンおよびコリン制限では、トリアシルグリセロールを肝臓内に封じ込め、肝臓中トリアシルグリセロール含量を増加させることができないことが明らかになった。 一方、各区で肝臓の門脈域や実質域に散在性の巣状壊死がある個体も見受けられた。この炎症は、ヒトなどで認められる脂肪性肝炎とは異なる機作で生じていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画に沿って、「メチオニンおよびコリン制限により、廃鶏の肝臓で過剰の脂質が蓄積する」ことを実証する試験を遂行した。しかし、本試験で用いたメチオニンおよびコリン制限では、トリアシルグリセロールを肝臓内に封じ込め、肝臓中トリアシルグリセロール含量を増加させることができないことが明らかになった。メチオニンの充足性を検討するため、血漿中遊離メチオニン濃度を測定することを計画していたが、分析機器の不調のため行えなかった。また、当初は、平成28年度にフルクトース多給試験を開始することを予定していたが、肝臓での炎症が一部の個体で認められたことから、この問題を解消するために計画の修正が必要となり、フルクトース多給試験を平成29年度当初に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓中の脂質含量を増加させるため、(1)メチオニンおよびコリン制限によりトリアシルグリセロールを肝臓内に封じ込めること、(2)フルクトース多給により肝臓でのトリアシルグリセロール産生を増加させること、が当初から計画されている。平成29年度はフルクトース多給試験を行う。この2つの肝臓中の脂質含量増加機作はまったく異なるので、(2)によって肝臓中の脂質含量を増加させることは可能であると考える。 一方、肝臓での炎症が一部の個体で認められたことから、この問題を解消するために、肝臓での炎症を抑えることが報告されているビタミンE(α-トコフェロール)補給もあわせて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
メチオニンの充足性を検討するため、血漿中遊離メチオニン濃度を測定することを計画していたが、分析機器の不調のため行えなかった。 フルクトース多給試験を開始することを予定していたが、肝臓での炎症が一部の個体で認められたことから、この問題を解消するために、計画の修正が必要となりフルクトース多給試験を開始できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の試験で得た保存中の血漿における遊離メチオニン濃度を測定する。 高フルクトース飼料を廃鶏に給与する試験を行う。また、各飼料に30 mg/kgのビタミンEを添加した区を設ける。 当初の計画とおり、高フルクトース飼料給与試験において採取したサンプルの分析を行う。
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