体細胞を成熟卵子へ移植して個体を作製する体細胞クローン技術は、絶滅危惧種の増殖や絶滅種の個体再生へのダイレクトな方法として期待できる。しかし、絶滅危惧種や絶滅種の成熟卵子を獲得することは困難あるいは不可能であるという問題がある。この問題を解決する最も現実的な方法のひとつが異種間核移植である。本研究課題においては、1) 他種の細胞核を移植された卵母細胞は体外成熟可能か、2) 体外成熟が可能な場合、その卵母細胞は細胞核が由来する種の体細胞核移植のレシピエントとして使用できるのか、3) 他種の卵核胞期卵母細胞に移植された細胞核は、卵母細胞が由来する種の成熟卵子への核移植に適した細胞核へ変化するのか、の3点を明らかにする。 平成30年度は、分担研究者を加え、細胞周期を同調させたマウス胎子由来線維芽細胞(MEF)およびモルモット成体由来線維芽細胞(GPF)をマウスおよびブタ卵核胞期卵母細胞に移植して体外成熟を試みた。そして、成熟した(第一極体を放出した)卵母細胞について、1) 単為発生能、2) 染色体の核移植ドナーとしての可能性の2点を調べた。 1) 成熟した異種間核移植卵母細胞の単位発生を試みたところ、卵割が起こらないもの、不等卵割や変性を起こすものが大多数であり、胚盤胞期へ発生したものはなかった。 2) 成熟した異種間核移植卵母細胞の染色体を除核卵子へ移植し、その再構築卵の体外発生を調べたところ、上記の単位発生と同様、卵割が起こらないもの、不等卵割や変性を起こすものが大多数であり、胚盤胞期へ発生したものはなかった。 以上のことから、本研究で試みた体細胞を卵核胞期卵母細胞へ移植するというアプローチでは、異種間核移植の発生能を向上させることは困難であった。
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