【目的】反芻動物のルーメン絨毛上皮組織は、離乳後に劇的に発達する。反芻動物は、ルーメン絨毛上皮組織の長さや密度を増加させてルーメン内の表面積を増やすことで、揮発性脂肪酸(VFA:酢酸、プロピオン酸、酪酸など)の吸収効率を高める。黒毛和種牛の離乳前後に急激に発達する前胃の機能を調査するために、脂肪酸受容体によるIGF結合タンパク質の機能を解明した。IGF結合タンパク質(IGFBP1~6)は、腸管上皮の発達を促すIGF-Iの働きを制御する役割を持つが、反芻動物のルーメン絨毛上皮組織の分化、形成、増殖と成長における役割は不明である。 【方法】(実験1)黒毛和種雄(11頭)を哺乳区(6頭)と離乳区(5頭)に分け、哺乳区は5週齢、離乳区(離乳:12週齢)は15週齢にルーメン絨毛上皮組織を採取し、IGF、IGF受容体とIGFBPsの遺伝子発現量を測定した。また、加齢による影響を調査するために、ホルスタイン種雄(6頭)を哺乳持続区(3頭)と離乳区(3頭)に分け、離乳区は6週齢で離乳を行い、両区は14週齢にルーメン絨毛上皮組織を採取し、同様に解析を行った。(実験2)ウシ培養ルーメン上皮細胞を用いて揮発性脂肪酸(VFA)で刺激し、IGFBPs遺伝子発現量を測定した。 【結果と考察】(実験1)離乳区は哺乳区と比べ、IGF-Iの働きを抑制するIGFBP2、3、6発現が減少し、IGF-Iの働きを促進するIGFBP5発現が有意に上昇したが、離乳区は哺乳持続区と比べ、IGFBP5発現のみが上昇する傾向だった。(実験2)VFA刺激によりIGFBP5の有意な発現の変化は認められなかった。以上より、ルーメン絨毛上皮組織の発達において、脂肪酸受容体を介したIGFBP5のが関与している可能性がある。
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