研究課題
A)神経突起上の輸送に重要なウイルスゲノムRNA領域の同定初代培養神経細胞に、各種神経向性フラビウイルスを感染させ、神経突起上へのウイルスゲノムRNAの輸送を解析した。その結果、ダニ媒介性フラビウイルス特異的に、ウイルスゲノムRNAは神経突起上を輸送されることが明らかになった。さらに、分化させ神経突起を形成したPC12細胞に、ウイルスゲノムRNAを発現させ、神経突起への輸送を解析することによって、ダニ媒介性フラビウイルスのウイルスゲノムの3’末端非翻訳領域の一部の配列が、この輸送の責任配列であることが同定された。B)ウイルスゲノムRNA輸送に関与する宿主因子の解析神経細胞が神経突起上でmRNAを輸送し蛋白に局所翻訳する過程において、キネシン蛋白やRNA結合蛋白等の宿主蛋白が構成するNeuronal granuleが重要な機能を果たしていると考えられている。ウイルス感染神経細胞において、ウイルスRNAとNeuronal granule構成因子の神経突起上の局在を解析した結果、両者の共局在が認められた。さらにウイルスゲノムRNAとNeuronal granule構成因子との相互作用を免疫沈降法により解析した所、一部の因子とウイルスRNAは結合している事が示され、この相互作用は、上記のウイルスゲノムRNAの神経突起内輸送の責任因子に変異を導入することで阻害されることが明らかになった。以上の解析結果により、ダニ媒介性フラビウイルスのウイルスゲノムRNAは3’末端非翻訳領域を介して、Neuronal granuleを利用することにより、神経突起状を輸送されることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、本年度では神経細胞のmRNA局所翻訳制御機構を利用したウイルスRNA輸送の分子機序の解析を遂行することができた。
野生型ウイルス及び、前年度の研究により同定された、神経突起への輸送に重要なゲノムRNA領域に変異・欠損を導入した組換えウイルスを用いて、感染による局所翻訳制御機構利用とその影響について比較解析していく。A)培養細胞における分子機序の解析初代培養神経細胞やPC12細胞を用いて、フラビウイルス感染による神経細胞の生理機能に与える影響について以下の点から解析する。神経突起上を輸送される、神経伝達物質や宿主mRNA等の神経突起上への局在・輸送状況を観察し、ウイルス感染による輸送障害を明らかにする。さらに、ii.神経突起の伸長/分岐への影響や、神経突起上のウイルスRNA輸送部位における微細構造の変化を観察し、ウイルス感染による神経突起の変性を明らかにする。これらの解析結果より、神経突起を介した神経ネットワークや付随する神経機能の阻害の分子機序を考察する。B)マウスモデルを用いた神経病態発現機序の解析マウスモデルにおけるウイルス感染による影響を、以下の点から解析する。ウイルス感染後のマウスの症状について、体温や体重等の一般項目、神経症状や異常行動(四肢の麻痺、平衡感覚の欠損等)、及び記憶・学習能力や社会性の変化について観察する。また、脳分子イメージングにより、脳内の神経情報伝達物質をはじめとする脳内分子の動態の変化の解析を行う。さらに脳内でのウイルス増殖性、ウイルスゲノムRNAの分布、組織病理学的変化等により病態の進行におけるウイルスの動態を検討する。これらの結果を併せて解析することにより、生体レベルでのウイルス感染による脳の高次機能への影響や、その病態発現機序を考察する。
海外研究協力者と年度末に予定していた研究打ち合わせ及び関連実験が、先方の受け入れ都合により2017年4月以降へ変更しなければならなくなったため。
当該研究年度末に予定していた、海外研究者との研究打ち合わせ及び関連実験のための消耗品購入に充てる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件)
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