研究課題/領域番号 |
16K15040
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
池田 輝雄 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (60151297)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マクロファージ / Lipid raft / 自然免疫 / 炎症 / スフィンゴ糖脂質 / ガングリオシド系列 / シグナル伝達 / 貪食殺菌能 |
研究実績の概要 |
ガングリオシドは細胞膜外層にするシアル酸含有スフィンゴ糖脂質であり、 細胞の分化・増殖や接着の調節・制御に関わる分子である。T細胞では活性化での関与が知られており、CD4とCD8陽性T細胞ではその作用が異なることが明らかとなっているが、その他の免疫担当細胞についてその関与は明らかでない。ガングリオシド生合成は GM3 合成酵素(SAT-I)によってラクトシルセラミド(LacCer)にシアル酸が転移され、GM3 が合成されることによって開始される。このGM3 はLipid raftと呼ばれる微小領域を形成し、そこに成長因子受容体やシグナル伝達分子、接着分子などの様々な分子を発現して、その機能を調節している。 平成28年度はGM3 合成酵素ノックアウト(GM3SKO)マウスから分離した腹腔および骨髄由来マクロファージの機能解析を行った。野生型およびGM3SKOマウスの腹腔マクロファージ数には有意な差は見られなかった。In vitroでの骨髄細胞からのGM-CSFおよびM-CSFによるマクロファージへの分化誘導は野生型に比べGM3SKO マウスは有意に遅れが認められた。しかしながら、腹腔および骨髄由来マクロファージの主要な表面マーカー分子発現には有意な差は認められなかった。免疫グログリン標識ビーズの貪食率および大腸菌殺菌率は野生型に比べGM3SKOマウスでは有意に抑制されていた。腹腔および骨髄由来マクロファージをリポ多糖(LPS)刺激し、炎症性サイトカイン誘導について解析を行った。腹腔および骨髄由来マクロファージ共に、代表的な炎症性サイトカインのmRNA発現は野生型に比べGM3SKOマウスでは誘導が有意に抑制された。炎症性サイトカインのタンパク産生もmRNA発現同様、野生型に比べGM3SKOマウス由来マクロファージでは有意な抑制が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガングリオシド系列のスフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子欠損マウスからの腹腔マクロファージおよび骨髄からM-CSFあるいはGM-CSF誘導による骨髄培養マクロファージを用いて、貪食・殺菌作用やPAMPs刺激によるマクロファージ活性化における機能発現について検討しているが、スフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子欠損マウスの供給が追い付かず、実験に必要なマクロファージの細胞数が確保できていないため、計画よりもやや進捗だ遅れている。そのため、現在マクロファージの細胞株であるRaw264.7での遺伝子編集を用いたスフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子欠損クローンのクローニングを試みている。細胞培養株でのスフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子欠損株が確立すれば、初代培養株と同様の実験がより速やかに進むものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にGM3 合成酵素ノックアウトマクロファージでの機能抑制における機序解析のため、シグナル伝達分子の発現動態を検討する。さらに、免疫応答誘導時に重要な役割を果たし、既に他の細胞では関与が報告されている細胞接着因子の発現への影響についても、定量的遺伝子発現を中心に検討する。またその他のスフィンゴ糖脂質ノックアウト由来マクロファージについても同様の解析を行い、Lipid raft合成経路の機能制御機構を検討する。また、進捗状況から、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集を用いて、ガングリオシド生合成経路ノックアウトマウスマクロファージ細胞株をRaw264,7で作成を試み、初代培養細胞と同様の解析を行うことにより、解析のスピードアップを進めていく予定であり、現在一部のクローニングを実施中である。
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