研究実績の概要 |
ガングリオシドは血流からのリンパ球の浸潤や上皮細胞接着の阻害など炎症部位での役割が知られている。今年度は、これまで得られてきたGM3KOマウス由来の腹腔および骨髄由来マクロファージでのGM3の炎症抑制作用を確認するため、マウスマクロファージ細胞株であるRaw 264.7細胞でのLPS誘導炎症反応におけるガングリオシドGM3の作用を検討した。Raw 264.7での遺伝子編集におけるエクソン2および3でのGM3KO細胞株の作製を試みたが現在までクローンが得られていない。GM3は、LPS刺激Raw264.7細胞におけるcycloexyenase-2(Cox2)およびiNosのmRNA発現および蛋白発現とNO産生を抑制した。さらにGM3添加により、IL-1β、IL-6およびTNF-αなどの前炎症性サイトカインのmRNAおよび蛋白発現も抑制した。これら抑制は、MAPKでのシグナル伝達経路ではERK, p38, JNKのうちERKだけに抑制が見られた。またNFκBを介したLPS刺激シグナル伝達経路では、GM3はNFκBのp65(RelA)の核内移行に対する有意な抑制が見られた。また、LPS刺激およびGM3添加の有無により細胞内TLR4発現量に差異は見られなかったが、LPS刺激により増加したRaw264.7細胞膜上でのTLR-4発現量はGM3添加により抑制された。以上の結果から、GM3はNKκBおよびERKを介したシグナル伝達経路の抑制による一酸化窒素やCox-2のmRNAおよび蛋白発現を抑制することを見出した。その抑制は、シグナル伝達経路の抑制だけではなく、細胞膜上の受容体の発現抑制にも及ぶことを確認した。これらのことから、有効な抗炎症剤として有用である可能性を示唆した。
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