• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

高病原性鳥インフルエンザウイルス出現阻止のための宿主因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 16K15041
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

酒井 宏治  国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (70515535)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードインフルエンザAウイルス / 高病原性化 / HA / 開裂 / 変異 / 宿主プロテアーゼ / 野生水禽 / 家禽
研究実績の概要

インフルエンザAウイルス(IAV)の感染性獲得には、ウイルス膜蛋白質のHAがプロテアーゼにより蛋白質分解性の修飾(HAの開裂)を受け、膜融合活性を発現する必要がある。IAVは自身でプロテアーゼ遺伝子を持たないため、HAを開裂できる宿主プロテアーゼを借用する必要があり、IAV増殖場所はそのプロテアーゼが存在する組織に限定される。
野生水禽から発育鶏卵で分離した低病原性株(HA開裂部位はmono-basicなアミノ酸配列)H7N1ウイルス(鶏で非病原性)及びその野生型マウス馴化株を用い、野生型マウスとTmprss2 KOマウスにおける感染実験において、野生水禽由来mono-basic H7N1ウイルスの生体内でのウイルス増殖、その後の病原性発現にTmprss2が必須の宿主因子であることを明らかにした。この事象は、これまでの申請者らの研究で明らかとなった季節性インフルエンザウイルスH1N1やH3N2と同様の結果であり、ヒトウイルスだけでなくトリウイルスにも共通原理であることが示唆された。
これまでの研究において、H3N2ウイルスの場合、TMPRSS2遺伝子欠損マウスでの連続継代後、本来はTMPRSS2依存性(TMPRSS2遺伝子欠損マウスで非病原性)であったウイルスが、HAに1アミノ酸変異(糖鎖欠失)を伴い、TMPRSS2遺伝子欠損マウスでHA開裂を起こす、病原性ウイルスに変異した。H7N1マウス馴化株についても、同様に、TMPRSS2遺伝子欠損マウスでの連続継代により、TMPRSS2遺伝子欠損マウスで病原性を示すTMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化H7N1ウイルスが得られた。これまで、TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化過程のどの段階で、どのような変異が起こったか、継代毎のマウス感染肺から得られたウイルス遺伝子配列について、サンガー法により、詳細に配列決定を実施し、これまで得られた次世代シーケンサーとの比較を合わせて実施した。また、野生水禽(マガモ)や家禽(鶏)のTMPRSS2等によるH7N1ウイルスのHA開裂能機能解析も実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化H7N1ウイルスの鶏での病原性試験を実施することが出来なかった。
昨年度、H7N1ウイルスの野生型マウス馴化株、TMPRSS2遺伝子欠損マウス継代毎での馴化株のウイルスゲノムの比較解析を次世代シーケンサーで実施したところ、5つのウイルス遺伝子において、12か所のアミノ酸変異が認められた。一方、次世代シーケンサーでは、同時に10サンプル以上のサンプル調整を独立して実施しなかった為、クロスコンタミと考えられる変異も同時に認められた(サンガー法の解析では、親株である野生型マウスでは認められなかったアミノ酸配列が認められた)。そこで、次世代シーケンサーでの解析の検証のため、TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化株のサンガー法での解析も、実施した。TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化で得られた変異は、昨年度と同様であるが、野生型マウス馴化株で認められた一部のアミノ酸配列については、TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化株からのクロスコンタミと考えられた。

今後の研究の推進方策

(1)TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化H7N1ウイルスの病原性解析
TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化H7N1ウイルスの鶏での病原性試験により、本来鶏で非病原性であったウイルスの病原性が、TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化により、どのように変化したのか明らかにする。ただし、これまでの報告より、鶏での高病原性化は、全てアミノ酸挿入であり、アミノ酸置換ではない。アミノ酸挿入によりは、構造学的にHA開裂部位領域が露出し、複数のプロテアーゼとの物理的接触が可能になると推測している。本研究での観察されたHA開裂部位へのアミノ酸置換での高病原性化は報告されていないことから、鶏での病原性は低病原性が推測される。
(2)研究のとりまとめ
これまでの得られた研究成果を科学論文に投稿するための論文作成作業を実施する。

次年度使用額が生じた理由

TMPRSS2遺伝子欠損マウス馴化H7N1ウイルスの鶏での病原性試験等を実施することが出来なかった。また、それに伴い、研究成果のとりまとめに遅延が生じた。
したがって、これらの研究の実施及び研究とりまとめを実施する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)

  • [学会発表] Role of an oligosaccharide in the hemagglutinin protein on the pathogenesis of H3N2 influenza A virus.2019

    • 著者名/発表者名
      Kouji Sakai, Naoya Nagata, Kimie Nomura, Takashi Irie, Kazuaki Takehara, Hiroaki Kanda, Yasushi Ami,
    • 学会等名
      The 1st Influenza and other Infections
    • 国際学会
  • [学会発表] 変異型インフルエンザウイルスH3N2のHA開裂におけるTMPRSS2利用能と病原性解析2018

    • 著者名/発表者名
      酒井宏治、永田直也、須崎百合子、竹原一明、網康至
    • 学会等名
      第161回日本獣医学会学術集会
  • [備考] 国立感染症研究所年報

    • URL

      https://www.niid.go.jp/niid/ja/anual.html

  • [備考] 国立感染症研究所 ウイルス第三部

    • URL

      https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-vir3.html

  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0091853/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi