研究課題
イヌの死因の約3割は悪性腫瘍(がん)であるとされており、特に高齢犬ではその傾向が高い。イヌの腫瘍に対しては現在、外科療法・放射線療法・化学療法の3大療法が主として用いられているが、イヌの体への負担や副作用、がん種と療法との相性などの面で制限を受ける場合も多く、3大療法に加えて新たな治療戦略の開発が望まれている。近年ヒト医療では、ニボルマブ(オプジーボ:抗PD-1抗体)に代表される免疫チェックポイント阻害薬が悪性黒色腫をはじめとした多くのがん種において著効を示し,免疫療法が第4の治療戦略として確立しつつある。H28年度は、悪性度が高いイヌの腫瘍疾患の免疫学的解析を行い、PD-1およびPD-L1が病態発症機序に関わるという新たな知見を得ることができた。これらの知見を基盤に新規疾病制御法の標的として新規医薬品を開発し、その効果について生体内で評価することが重要である。そこでH29年度は、イヌの腫瘍治療に応用できる免疫チェックポイント阻害薬としてラット-イヌキメラ抗PD-L1抗体を開発し、同抗体が、腫瘍免疫を活性化させることを確認した。さらに同抗体を用いて、難治性の悪性腫瘍に罹ったイヌに対する臨床応用研究を行った。その結果、悪性黒色腫と未分化肉腫に罹ったイヌの一部で、明らかな腫瘍の退縮効果が確認された。また、悪性黒色腫では肺に転移した後の生存期間を延長する効果も示唆された。本開発技術は、悪性黒色腫をはじめとしたイヌの難治性腫瘍の治療薬として期待できる成果と考えられた。
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