現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は地方病性牛白血病発症牛、とくに36カ月未満の若齢発症牛材料の蓄積を図るために、北海道NOSAI及びNOSAI岩手と共同し、年齢にかかわらず牛白血病発症牛の材料採材につとめ、3歳未満の若齢牛5頭及び3歳以上の高齢発症牛31頭の腫瘍化リンパ節・全血等の材料を得た。また、若齢発症牛5頭のうち4頭については、牛白血病ウイルス感染腫瘍細胞のモノクローナルな増殖、およびB細胞のモノクローナル増殖が確認され、地方病性牛白血病を発症していることが証明された。材料は予想以上に順調に収集されている。ただし、臨床材料対応を優先したために、発がんに関与する遺伝子として、がん抑制(p15, p16, p73),細胞接着(cadherin),DNA修復(MLH1, MGHT),アポトーシス(DAPK)および免疫関連(interleukin, TNFなど)遺伝子解析のためのプライマー設計が実施できなかった。なお、地方病性牛白血病発症牛における牛白血病ウイルス-プロウイルス挿入部位の解析については、Inverse PCR の結果、若齢の地方病性牛白血病発症と判定された3頭のinverse PCR産物の遺伝子解析により、牛白血病プロウイルスの組込み部位がそれぞれ11、17、18番目の染色体であることが明らかになったが、遺伝子座の特定には至らなかった。若齢牛EBL発症に牛白血病ウイルス-プロウイルスの組込み部位が関連する可能性は低いと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は以下のように研究を推進する予定である。 1)地方病性牛白血病発症若齢牛症例材料の確保:29年度も引き続き地方病性牛白血病発症若齢牛症例材料を確保するため、NOSAI組織に加えて、北海道内の食肉衛生検査所に研究協力を依頼する。また同時に発症牛の飼育環境・飼養管理状況等疫学情報を収集する。 2)若齢EBL発症牛における発がんに関与する遺伝子の解析:宿主遺伝子として、がん抑制(p15, p16, p73),細胞接着(cadherin),DNA修復(MLH1, MGHT),アポトーシス(DAPK),および免疫関連(interleukin, TNFなど)の各遺伝子に着目し,解析のためのプライマー設計を中心としてPCR系を確立する。また,既に集められた地方病性牛白血病発症牛の材料を用いて対象遺伝子の突然変異の有無を確認する。 3)地方病性牛白血病発症若齢牛症例におけるエピジェネティクス解析:若齢発症牛、高齢発症牛及び健常牛の、まずはがん抑制遺伝子(p15, p16, p73)に着目し、DNA異常メチル化状態の程度を解析する。
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