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2017 年度 実施状況報告書

エピジェネティクス解析による地方病性牛白血病の若齢発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K15044
研究機関帯広畜産大学

研究代表者

猪熊 壽  帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70263803)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード地方病性牛白血病、 / 牛白血病ウイルス / 若齢発症、 / メチル化解析 / 症例報告
研究実績の概要

1)若齢発症の地方病性牛白血病症例の蓄積:29年度には北海道及び岩手県の家畜診療施設、並びに北海道の食肉衛生検査施設と共同し、牛白血病発症牛の材料を積極的に収集したところ、3歳未満の若齢牛40症例の腫瘍化リンパ節または全血材料を得た。40検体中35検体が牛白血病ウイルス(BLV)陽性であり、そのうち26検体がinverse PCRによりモノクローナル組込みが確認され、地方病性牛白血病が若齢牛でも相当数発生していることを証明した。
2)迅速簡便な地方病性牛白血病証明法の検討:牛ゲノムへのBLVのモノクローナルな組込みを証明するためのinverse PCRは時間とコストがかかるのが欠点である。このため、より簡便な方法としてB細胞のモノクローナリティー増殖をPCRで示すこと、およびBLVプロウイルス量の増多を示すことで当該牛白血病症例がBLV感染に起因する地方病性牛白血病であることを示した。
3)地方病性牛白血病症例の発がん関連遺伝子のメチル化解析:地方病性牛白血病症例の腫瘍細胞を材料に、発がんに関与する遺伝子であるがん抑制遺伝子p53 及びアポトーシス遺伝子DAPK1に着目し、バイサルファイト法によりメチル化解析を実施したところ、EBL発症牛では非発症牛に比べてp53 のメチル化については差がないものの、DAPK1のメチル化が亢進している可能性が示唆された。DAPK1のメチル化が発がんに関係することが考えられた。
4)地方病性牛白血病発症牛症例を収集する過程で、リンパ節の腫大がない非典型的な牛白血病、牛白血病との鑑別が必要な心膜由来中皮腫、及び子牛の赤芽球勞症例に遭遇した、いずれも臨床的にはたいへん希少であるため、症例報告として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

29年度は昨年度に続き若齢牛牛白血病症例の蓄積に努めた。成果として北海道及び岩手県の家畜診療施設及び食肉衛生検査施設の協力を得て、3歳未満の若齢牛牛白血病40症例を収集し、うち26検体が牛白血病ウイルス陽性かつinverse PCRにより腫瘍細胞がモノクローナルに増殖していることを示し、地方病性牛白血病が若齢牛でも相当数発生していることが証明できた。これらの発症牛の腫瘍細胞を材料として、地方病性牛白血病若齢発症牛におけるエピジェネティクス解析として、発がんに関与する遺伝子であるがん抑制遺伝子p53 及びアポトーシス遺伝子DAPK1に着目し、バイサルファイト法を用いてメチル化解析を実施したところ、地方病性牛白血病発症牛では非発症牛に比べてp53 のメチル化については差がないものの、DAPK1のメチル化が亢進している可能性が示唆された。また、今年度の研究の過程で、当該牛白血病がBLV感染に起因するEBLであることを証明する方法として、牛ゲノムへのBLVのモノクローナル組込みをinverse PCRを用いて示すことに代わり、B細胞モノクローナリティーPCRとBLVプロウイルスの定量を組み合わせる方法がより迅速簡便であることが明らかとなった。さらに、地方病性牛白血病発症牛症例を収集する過程で、リンパ節の腫大がない非典型的な牛白血病、牛白血病との鑑別が必要な心膜原発性中皮腫、及び赤芽球勞症例に遭遇した、いずれも臨床的にはたいへん希少であり、症例報告として発表した。

今後の研究の推進方策

平成30年度は以下のように研究を推進する予定である。
1)若齢発症の地方病性牛白血病症例材料の確保(継続):30年度も引き続き若齢発症の地方病性牛白血病症例を確保するため、北海道及び岩手県の家畜診療施設及び食肉衛生検査施設に研究協力を依頼する。症例収集の過程で得られる希少な症例については、現場への情報フィードバックを目的として積極的に症例報告する。
2)若齢発症牛の地方病性牛白血病における発がんに関与する遺伝子のメチル化解析:29年度に実施した以外の宿主遺伝子として、がん抑制(p15),細胞接着(cadherin),DNA修復(MLH1, MGHT),および免疫関連(interleukin, TNF)の各遺伝子に着目し,バイサルファイト法を用いて、標的遺伝子の上流に位置するCpGアイランド領域のメチル化解析を行う。また、30年度はメチル化解析にクローニング手法を取り入れ、より高い精度で解析を行い、DNA異常メチル化状態の程度を明らかにする。
3)また、BLVが組み込まれた周辺の宿主ゲノム解析を行い、宿主ゲノム内のどこにBLVが組込まれたかについて明らかにする。
4)30年度は最終年度のため、研究成果は積極的に学会発表及び論文として公表することに努める。

次年度使用額が生じた理由

【理由】年度末(3月)のサンプル送付にかかる宅急便料金を科研費で請求したにもかかわらず、学内予算で精算されたため2,056円の余剰が生じた。
【使用計画】物品費として使用する予定、

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Pure red cell aplasia in a Holstein calf.2018

    • 著者名/発表者名
      Maezawa, M, Koyama, K., Tanaka, Y., Horiuchi, N., Kobayashi, Y., Inokuma, H..
    • 雑誌名

      Comp. Clin. Pathol.

      巻: 27 ページ: 253-255

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s00580-017-2586-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A clinical case of enzootic bovine leukosis in a 13 months old Holstein heifer.2018

    • 著者名/発表者名
      Maezawa, M., Watanabe, K., Horiuchi, N., Matsumoto, K., Kobayashi, Y., Inokuma, H.
    • 雑誌名

      Jap. J. Vet. Res.

      巻: 66 ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pericardial mesothelioma with severe congestive heart failure in a Holstein cow.2017

    • 著者名/発表者名
      Suzuki H., Watanabe, K., Horiuchi, N., Kobayashi, Y., Inokuma, H.
    • 雑誌名

      Jap. J. Vet. Res.

      巻: 65 ページ: 167-172

    • DOI

      http://doi.org/10.14943/jjvr.65.3.167

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 体表リンパ節腫大のない地方病性牛白血病ホルスタイン種乳牛の1症例.2017

    • 著者名/発表者名
      坂口加奈,前澤誠希,田中佑典,互野佑香,上沢 彩,渡邉謙一,堀内雅之,古林与志安,猪熊 壽.
    • 雑誌名

      産業動物臨床医学雑誌

      巻: 8 ページ: 227-230

    • 査読あり
  • [学会発表] 3歳未満の牛における地方病性牛白血病の発生状況2018

    • 著者名/発表者名
      前澤誠希,猪熊 壽
    • 学会等名
      日仏獣医学会第58回研究例会
  • [学会発表] マイクロチップ型核酸分離システムを用いた牛白血病ウイルス感染による持続性リンパ球増多症B細胞のクローナリティー解析2018

    • 著者名/発表者名
      坂口加奈,前澤誠希,猪熊 壽
    • 学会等名
      日仏獣医学会第58回研究例会
  • [学会発表] 方病性牛白血病を発症した13ヵ月齢ホルスタイン種育成牛の1症例2017

    • 著者名/発表者名
      前澤誠希,鈴木遥香,藤井沙希子,太田 明,渡邉謙一,堀内雅之,古林与志安,猪熊 壽
    • 学会等名
      平成29年度北海道地区三学会(産業動物獣医学会)
  • [学会発表] 若齢牛における地方病性牛白血病の簡易診断法の検討2017

    • 著者名/発表者名
      前澤誠希,松本高太郎,古林与志安,猪熊 壽
    • 学会等名
      第160日本獣医学会
  • [学会発表] ホルスタイン種乳牛にみられた心膜原発悪性中皮腫の1症例2017

    • 著者名/発表者名
      猪熊 壽,鈴木遥香,上坂花鈴,前澤誠希,渡邉謙一,堀内雅之,古林与志安
    • 学会等名
      第160日本獣医学会

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公開日: 2018-12-17  

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