本研究では、ダイレクト・リプログラミング法を用いて、イヌの皮膚線維芽細胞から肝臓細胞への分化誘導系の確立を目指した。まず、成イヌの皮膚線維芽細胞を分離・培養してウイルスベクターを用いて、Hinf4およびFoxa1を導入し肝前駆細胞への分化誘導を確認した。さらに、適切な分化誘導因子の選択と培養条件を検討し、効率の良い線維芽細胞の除去および成熟肝細胞への分化誘導のプロトコールを作成することを目的とした。 これまで、パッケージング細胞であるPLAT-Aにてレトロウイルスベクターを培養し、得られたウイルスを用いて遺伝子導入し、肝細胞誘導用の培地(DMEMおよびF12)にて、効率の良い分化誘導の条件検討を行った。その結果、MOI100~200にて効率的な分化誘導が出来ることが明らかとなった。 その後、イヌの皮膚線維芽細胞だけでなく骨髄由来間葉系細胞からの分化誘導も行っている。アルブミン遺伝子およびE-カドフェリンの発現のmRNA発現量を基に、肝細胞への分化誘導に適切な条件を検討し指摘条件を設定した。定量的PCRの結果、Albumin発現量は遺伝子導入後day10において、分化誘導前に比べ百万倍の増加が見られた(正常肝細胞の0.01%)。しかしながら、day20ではその発現が減弱した。 免疫細胞化学の結果、遺伝子導入後day30においてAlbuminが検出された。F-actinの分布を確認した結果、遺伝子導入群においてF-Actinは細胞質全体への繊維状の分布から、細胞膜直下へ分布が変化し多角形の肝細胞様構造を示した。以上の結果から、イヌBMSCsからアルブミンを発現する肝細胞様細胞への分化誘導に成功した(第14回日本獣医再生医療学会で発表)。
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