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2016 年度 実施状況報告書

マウス初期胚における液性因子による転移因子制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 16K15054
研究機関九州大学

研究代表者

今村 拓也  九州大学, 医学研究院, 准教授 (90390682)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードエピジェネティクス / レトロトランスポゾン / 全能性 / 多能性
研究実績の概要

本研究は、マウス初期胚発生におけるインターロイキン類がもたらすゲノムワイドな効果を明らかにすることで、細胞の分化制御能力を担う転移因子の一時的活性化と再不活性化の機構を解明し、制御の自在化を目指すものである。平成28年度はIL17ファミリー分子に属するIL17Dタンパク質が様々な細胞で確かにレトロトランスポゾン活性を抑えうることを明らかにすることに成功した。
まず、胚盤胞期のトランスクリプトーム解析を行ったところ、人為的なIL17Dの活性低下に伴って、レトロトランスポゾンの活性化、特にMERBLとIAPEzファミリーに属するRNA断片が3倍以上上昇することが分かった。これは発生が中途で停止してしまう雌性発生胚にもみられる現象であり、IL17Dによる着床期前の胚における正常なエピゲノム獲得がレトロトランスポゾン制御に重要であることが示唆された。並行して、多能性幹細胞を神経幹細胞に分化させたものについて、IL17Dのノックダウンを行ったところ、細胞がアポトーシスすること、及び、IL17D添加が細胞の増殖を抑制することがわかった。神経系細胞においてもノックダウンした場合には、やはり全能性期である2細胞期胚や多能性幹細胞であるES細胞と同様に、MERVL系列のレトロトランスポゾンの活性化が起こってしまう。また、関連する受容体の同定と下流シグナルカスケードの探索を進めており、研究当初はJAK-STAT系の利用を想定していたが、さまざまなシグナル経路阻害剤添加実験と組み合わせた実験から、IL17D によるレトロトランスポゾンサンレンシングはNF-kB経路のシグナルを利用しているというデータを予備的に得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IL17Dのシグナルカスケードが明らかになりつつあり、その下流において、どのようなエピゲノム制御因子が機能してレトロトランスポゾン活性を制御するのかを同定する基礎を固めることができたため。

今後の研究の推進方策

絞り込んだ候補因子のノックダウン細胞を用いたトランスクリプトーム解析とバイオインフォマティクスを駆使して、液性因子によるゲノム免疫の分子基盤を明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

ゲノムワイドなバイオインフォマティクス解析をより選択的に行うための細胞操作実験において期待以上の成績を得たため、関連実験に注力し、それに伴って、初年度に想定していたトランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を次年度に充実させるため、必要経費を確保した。

次年度使用額の使用計画

トランスクリプトーム解析とエピゲノム解析を充実させる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Evolutionary acquisition of promoter-associated non-coding RNA (pancRNA) repertoires diversifies species-dependent gene activation mechanisms in mammals2017

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Uesaka, Kiyokazu Agata, Takao Oishi, Kinichi Nakashima, Takuya Imamura
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 18 ページ: 285

    • DOI

      10.1186/s12864-017-3662-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Manipulation of promoter-associated noncoding RNAs in mouse early embryos for controlling sequence-specific epigenetic status2017

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiko Hamazaki, Kinichi Nakashima, Takuya Imamura
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 1543 ページ: 271

    • DOI

      10.1007/978-1-4939-6716-2_16

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Reconstitution in vitro of the entire cycle of the mouse female germ line2016

    • 著者名/発表者名
      Orie Hikabe, Nobuhiko Hamazaki, Go Nagamatsu, Yayoi Obata, Yuji Hirao, Norio Hamada, So Shimamoto, Takuya Imamura, Kinichi Nakashima, Mitinori Saitou, Katsuhiko Hayashi
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 539 ページ: 299

    • DOI

      10.1038/nature20104

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒトES/iPS細胞から神経幹細胞への誘導とその分化過程におけるノンコーディングRNA(pancRNA)を介した特異的遺伝子活性化2016

    • 著者名/発表者名
      藤本雄一、亀田朋典、小野田孝太、吉良潤一、中島欽一、今村拓也:ヒトES/iPS細胞から神経幹細胞への誘導とその分化過程におけるノンコーディングRNA(pancRNA)を介した特異的遺伝子活性化
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] マウス性的二型核内の細胞でみられるアンドロジェン依存的なDNAメチル化レベルの変化2016

    • 著者名/発表者名
      小野田孝太、佐藤弘明、浜崎伸彦、中嶋秀行、束村博子、前多敬一郎、中島欽一、今村拓也
    • 学会等名
      第10回エピジェネティクス研究会
    • 発表場所
      千里ライフサイエンスセンター(大阪)
    • 年月日
      2016-05-19 – 2016-05-20
  • [備考] 研究代表者HP

    • URL

      http://scb.wp.med.kyushu-u.ac.jp/imamura

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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