研究実績の概要 |
我々が開発した急速凍結・凍結割断レプリカ標識法を用いることにより,ホスファチジルイノシトール4リン酸(PtdIns(4)P)を標識できる方法を今回,確立した.オートファジー誘導酵母のレプリカを抗PtdIns(4)P抗体で標識すると,二重膜の内膜と外膜共に,PtdIns(4)Pの標識は主に外葉に局在することがわかった.酵母には,PtdIns(4)Pの産生に関与する酵素,つまりPtdIns 4-kinase (PI 4-K)が3つ存在する.それらはPik1, Stt4, Lsb6である.これらのPI 4-Kの内,Pik1およびStt4では致死となるため温度感受性株を作成した.これらのノックアウトあるいは温度感受性酵母株を作成することにより,オートファジーにおけるPI 4-Kの関与を検討した.Lsb6をノックアウトした株では,オートファジー誘導によって野生株と同様にオートファゴソームとオートファジックボディーが観察された.しかし,Pik1とStt4の温度感受性株(Pik1tsとStt4ts)では,38度で培養した状態,つまりPik1およびStt4の酵素活性が抑制した状態では,両PI 4-K共にオートファジーが抑制された.オートファジーを誘導したそれぞれの株のレプリカを電子顕微鏡で観察したところ,26度で培養した正常な酵素活性を示すPik1tsおよびStt4ts株においては,オートファゴソームとオートファジックボディーが野生株と同様に観察された.一方,38度Cで培養したPik1ts株では,オートファゴソームおよびオートファジックボディーは全く観察されなかった.これに対して,38度で培養したStt4ts株においては,オートファゴソームは観察されたものの,オートファジックボディーはほぼ完全に観察されなかった.これらのことから,酵母が持つPI 4-Kの内,Pik1はオートファゴソームの形成に,Stt4はオートファゴソームと液胞の融合に関与することが示唆される.
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