研究課題
高齢個体、長期飼育された個体の死体を収集し、標本化を推進するとともに、博物館収蔵骨格標本からのデータ収集を開始し、解析結果を得るに至っている。骨形質のマクロ形態学的検討に加え、医療用CTスキャナーによる三次元情報化を実績として残すことができている。本年度は、網羅的収集と大容量の三次元情報化を通じて、高齢個体とともに標準的な成体の比較データを多数得ることができ、超高齢動物の生理病理状態と形態学的特質を語るための素地が固まったといえる。キリンにおいては、成体老体における椎骨の変異論と機能推定に踏み込むことができた。中型肉食獣は愛玩動物の標本が運用でき、高齢個体の頭部形質が検出できている。これは今後咀嚼機能の高齢化病変に一般論化できる可能性をもっている。ニワトリについても実績を得ることができ、原種セキショクヤケイのほか、数多くの愛玩品種においても、変異と高齢化を骨学的に解析することができている。アジア在来鶏の愛玩品種では、畜産業の家畜生産現場とは異なる水準で加齢・高齢個体を観察、骨格標本を集めることができ、とくに中足骨など、愛玩品種の育種動機に直結する形質の加齢高齢変異を把握することが可能となった。総じて、ヤケイ・ニワトリ集団の年齢と形態については、一定の生理学的設計傾向を把握することに成功している。そのほか、アリクイ類の全身骨格、走鳥(古顎)類の椎体から骨盤にかけて、ワニ類の椎体、コウモリ類の頭蓋などの骨学的加齢状態を追うことができた。これらは国際誌および学会等で発表を進めている。超高齢個体特有の病変についてはゾウやサイなどの生理学的長寿動物の死体・骨格を動物園より得て、次年度の解析に用いるべく予備的検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画により動物園動物の骨格標本収集が飛躍的に進展し、加齢高齢動物の骨学的状態変化を普遍的に理論化し、この狙いから関連学界を導き得る情勢を作ったといえる。大量の死体から得た情報が直接有益できあるとともに、三次元化が進捗したことで、世界標準による情報インフラに飼育動物とくに高齢化個体の情報を載せることが可能となってきた。骨病理学に直接与える影響はまだ大きくないが、骨格における老齢・加齢に関する病理学的ファクターの解析が始まっている。また初年度の進捗の中には、博物館を基軸とした既存の共同利用体制の中で、高齢をキーワードに集めている大量の骨格標本と情報が、病理学のほかに加齢個体の検証を必要とする基礎生物学理論にも波及効果を及ぼしていることが特記され、予想以上の研究実績に早期に結びつくことが確実である。
超高齢動物の骨病理の理論化が第二年度の主題の一つとなる。全国の動物園の協力により、超高齢獣としては、すでにキリンの解析が進みつつあるため、キリンによる理論化が期待される。他方、本研究計画を通じて長鼻類、奇蹄目サイ類などの超高齢個体の解析が進みつつあり、第二年度での解析、理論の完成、公開が待たれる。一方、古顎類カメ類ワニ類などの非哺乳類の生理学的高齢種の死体が動物園より導入されつつあるため、大系統の進化学的相違が超高齢個体に及ぼす影響の違いを検証し、理論化したいと考える。これらの骨格標本と情報により、当初計画した通りに超高齢動物の骨病変理論を構築しするとともに、第二年度は、動物福祉の立脚点から、飼育園館における飼育技術の向上に貢献することを目標に、理論情報の広範な流通を進める。
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