研究課題/領域番号 |
16K15059
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
谷口 隆秀 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70282803)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 神経回路 / コネクトーム解析 / イメージング / 蛍光タンパク質 / ニューロトレーシング |
研究実績の概要 |
本年度は、安全なニューロトレーサーウイルスとしての組換えPHEV 67N株作製とPHEV検出系確立のため、Nタンパク質の各種発現系・検出系を開発した。齧歯類神経細胞高親和性株 PHEV 67N 岩手株のNタンパク質遺伝子を元に大腸菌発現系を用いた組換えPHEV 67N 株Nタンパク質を作製し、抗PHEV Nタンパク質抗体を高感度に検出可能なELISA法を確立した。現在、わが国におけるPHEV感染症に対する疫学調査を継続して実施中である。 PHEV Nタンパク質遺伝子を、EF1αプロモーターを持つ哺乳類細胞発現ベクターに組み込み、FS-L3細胞と神経細胞へ分化するPC12細胞に遺伝子導入し、PHEV Nタンパク質を発現する細胞株を作製した。これらの細胞は、Nタンパク質遺伝子を欠損した発光タンパク質遺伝子導入PHEV 67N 組換えウイルス株と組み合わせることにより、さらに安全性の高いニューロトレーサーウイルスと宿主となる実験動物の系の開発に関する基礎データを得るための重要なツールとなる。 ウイルスゲノム解析の結果、大きな遺伝子変異が存在することが明らかとなった ns2遺伝子の機能・感染細胞での発現様態を調べるため、大腸菌発現系により組換えns2タンパク質を作製し、組換えns2タンパク質を抗原として作製した 抗ns2ポリクローナル抗体を用いて PHEV 感染細胞でのns2の発現様態を間接蛍光抗体法により明らかとした。 げっ歯類神経細胞への適応によるためか PHEV 67N株の様々な細胞株への感染性が変化しており、当初使用予定であったfcwf-4細胞が実験に使用できなくなっていることが明らかとなったため、ウイルスゲノム相同組換えに適した新たな細胞株の選定実験を実施し、最も適した細胞株を確定した。今後、PHEウイルスの相同組換え実験に適したこの細胞株を用いて効率よく発光タンパク質遺伝子導入PHEV 67N 組換えウイルス株の作製を進めることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PHEV Nタンパク質の大腸菌発現系による組換えタンパク質の作製、組換えNタンパク質を用いたELISA法による抗PHEV 抗体検出法の開発、PHEV Nタンパク質を発現する哺乳類培養細胞の作製など、概ね予定通り進行した。また、発光タンパク質遺伝子挿入部位の候補であったが大きな遺伝子変異が確認されたns2 遺伝子から産生されるns2タンパク質の発現様態や機能の解析も順調に進んでいる。 一方で、相同組換えによる発光タンパク質遺伝子導入組換えウイルス株の作製に使用する予定であったfcwf-4細胞(ネコマクロファージ系株化細胞)に対するPHEV67株の感染性が変化したため、相同組換え実験に使用することができず、実験に使用可能な新たな細胞株の選定に時間を費やすこととなった。そのため、発光タンパク質遺伝子導入PHEV 67N 組換えウイルス株の作製開始が遅れたが、多くの細胞株を用いて検討した結果、相同組換え実験に適した細胞株を確定できたことから、平成30年は予定通り、相同組換えシステムによる高輝度発光タンパク質遺伝子導入PHEV 67N 組換えウイルス株の作製とニューロトレーシング解析を進めることができものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞特異的プロモーター制御によるPEDV 67N株 Nタンパク質発現PC12細胞, neuro-2a細胞の作製、神経細胞特異的にPHEV Nタンパク質を発現させる発現系の開発を継続する。 相同組換えシステムによる高輝度発光タンパク質遺伝子導入PHEV 67N 組換えウイルス株の作製を継続して実施する。CrFK細胞とType IIネコ腸コロナウイルス 79-1683株を用いた相同組換えにより、GFP-1 遺伝子を組み込んだPHEV 67N 株を作製する。 PHEV 67N 株(ニューロトレーサーウイルス)の、FS-L3細胞およびPC12細胞などの培養細胞系での感染・増殖とGFPなどの発光を確認すると同時に、マウス脳スライス培養系を用いてに対し in vitro で新規作製 ニューロトレーサーウイルスを感染させ、中枢神経組織におけるニューロトレーサーウイルスの動態について解析を進める。さらに、マウス脳透明化技術を用いて、脳全体を検体として蛍光実体顕微鏡下での神経接続のトレーシングを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)一昨年から昨年にかけて朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射や核実験が続いたため、発表を予定していた国際学会、第33回 国際獣医学会 (韓国 仁川):33th World Veterinary Congress (WVC), August 27 - 31, 2017. Incheon, Korea、への参加を取りやめた。そのため、学会参加費や海外出張旅費を使用しなかったことから次年度使用額が生じた。 (使用計画)平成30年度が最終年度であり、学会発表や論文投稿関連費用が増加することが予想されることから、次年度使用額はそれらの増加分に当てる。
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