カイコ第2染色体(8.4Mb: 2018.4.16現在のSilkbaseデータ)上に設定した、27マーカーにより、モノソミーと推定された個体から、大きな欠失をもつ第2染色体部位が絞り込まれた。これにより完全モノソミーと部分ヘミ個体をreal-time定量PCR(qPCR)により簡便診断したところ、遅れ小蚕57個体中3個体がモノソミーと診断された。昨年度調査結果も併せ、27マーカーによる判定で2個体はモノソミーと判断した。昨年度、選抜したモノソミー個体と標準系統p50のゲノムDNAシークエンスを行い、リード50kbウインドー毎に頻度解析を行ったところ、第2染色体のみが大部分で標準系統の配列の出現頻度が1/2程度であった。この結果は、PCRによるモノソミー判定結果を強く支持するものである。 これらモノソミー雄とマーカーとなる形質遺伝子座を有する正常雌との交配越年卵から孵化させた個体(F1)形質により判別したモノソミー候補に対し、上記27マーカーによるqPCRを行ったところ、雌雄共にモノソミーと判定された。さらに、次世代(F2)を形質判別し、モノソミー候補と正常候補の染色体をBAC-FISH比較した。正常候補の2n=56(正常な染色体数)に対し、前者は第2染色体を1本欠く2n=55で、減数分裂時には第2染色体ユニバレントが観察された。これら判定に基づき、RNAseqによりF2におけるモノソミーに対する正常のmRNA発現頻度比較を行ったところ、第2染色体は0.59と低い値を示す一方、他の26常染色体の平均発現比は約1であった。このことからモノソミー個体の遺伝子発現は、総じて遺伝子数に比例すると推定された。 脱皮ホルモンに応答して発現が誘導される遺伝子と変態のタイミングに関連する幼若ホルモン関連遺伝子については、2つのNGSを行った結果、資金的に不可能となった。
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