研究課題
本研究は、極限乾燥耐性生物であるネムリユスリカがもつ乾燥・塩によって発現調節される遺伝子のプロモーターとその制御因子を同定することを基盤として、新規な乾燥・塩ストレス制御型タンパク質発現システムを開発することを目的としている。今年度はその手始めとして、恒常発現プロモーターを単離した。具体的には、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素遺伝子 (PvGapdh)は、ネムリユスリカの培養細胞(Pv11)で恒常的に高発現している遺伝子の一つである。そのPvGapdh遺伝子の5'上流域を単離し、プロモーター領域を同定した。このPvGapdhプロモーターを使った発現ベクター(pPGK)を構築した。このベクターを利用することで、GFPやRFPといった蛍光タンパク質をPv11細胞に発現させることに成功した。ちなみに、ショウジョウバエやカイコで用いられている市販の発現ベクターでは、Pv11細胞にGFPを発現できない。本研究で得られたpPGKベクターを用いることで、GFP以外にもルシフェラーゼやCas9ヌクレアーゼなど多様な遺伝子をPv11細胞に発現させることが可能となった。また、Pv11細胞のトランスクリプトーム解析(CAGE解析)も進めた。その結果、既に分かっていたLEA遺伝子やアクアポリン1遺伝子以外にも、複数の乾燥誘導性が存在することが明らかとなった。CAGE解析では転写開始点が判別できるため、プロモーターがゲノムのどの辺りに存在するか推定しやすくなる。次なるプロモーター同定実験に備え、現在、CAGE解析のデータベース化を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今回の恒常発現プロモーターを用いた発現ベクター構築に成功したことで、乾燥誘導性プロモーターを利用したベクター構築の手本はできたといえよう。このベクター構築に関しては、論文として発表済みで有る (Sogame et al., Extremophiles, 2017)。現在、トランスクリプトーム(CAGE解析)の結果から、乾燥で最も半減誘導される遺伝子を同定している。従って、乾燥誘導性発現ベクターの構築は間違い無く行えると確信している。
前述の方法に準じて、乾燥誘導性遺伝子の5’上流を単離し、レポーターアッセイによるプロモーター同定を行う。領域が確定したなら、乾燥誘導性発現ベクターの構築を行う。得られたベクターをPv11細胞に遺伝子導入することにより、外来性遺伝子(GFPやルシフェラーゼ)が乾燥及び塩ストレスで発現誘導されるか調べる。
ほぼ計画通りに予算消化できたが、発注計画を商品の定価ベースで計算していたため、実際の納入価との差が積算されて、7445円の残となった。
繰り越した残金は、次年度の消耗品(合成DNAなど)の購入に充当する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 13件、 招待講演 7件)
Extremophiles
巻: 21 ページ: 65-72
10.1007/s00792-016-0880-4
巻: 21 ページ: 109-120
10.1007/s00792-016-0888-9
Current Opinion in Insect Science
巻: 19 ページ: 16-21
10.1016/j.cois.2016.10.008
BioNanoScience
巻: - ページ: -
10.1007/s12668-016-0356-0
巻: 7 ページ: 212-215
10.1007/s12668-016-0312-z
化学と生物
巻: 54 ページ: 248-253
10.1271/kagakutoseibutsu.54.248
巻: 6 ページ: 568-570
10.1007/s12668-016-0278-x
巻: 6 ページ: 554-557
10.1007/s12668-016-0275-0