研究課題/領域番号 |
16K15078
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
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研究分担者 |
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20435712)
林 利彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90189655)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蚊 / マダニ / 節足動物媒介感染症 / 地理情報システム / 3次元マップ / モニタリングシステム構築 |
研究実績の概要 |
本研究では、感染症の伝搬に関与する蚊・マダニを対象とし、それらの分布を地理情報システム(GIS)等を利用して、地域的・経年的に観測するためのモニタリングシステムを構築する。さらに、分布に関わる環境要因を数値化し、3次元(3D)マップによる可視化を目標とした。 デングウイルス媒介蚊:岡山県内の定点調査地(複合施設)においてヒトスジシマカ成虫の密度調査を行い、昨年の調査結果と比較・解析を行った。深層学習と従来の回帰分析によるリスクマップの精度の比較を行うために、捕集した蚊の調査定点および捕集個体数を地理情報システムで利用できるようにデータを整理した。成虫の潜み場所の環境要因の数値化のために、2015年および2016年の上記岡山県内の定点調査地での情報を使用し、蚊の捕集個体数を説明する定点周囲の環境指標について、できる限りオープンソースのデータを収集するとともに、環境指標としての利用可能性ならびに有効性を検討した。一方、成虫の飛来が初めて見られる日(初見日)と終了日をできるだけ多くの地域で継続的に調査し、気温との相関を評価した。 日本脳炎ウイルス媒介蚊:コガタアカイエカの飛来源や飛来経路の推定するために、長崎県内の定点調査地における捕集結果をまとめ、国内および近隣のアジア地域の気温や風向の年次変動等を含む包括的な大気観測情報との照合を試みた。また、国内での移動と拡散、成虫越冬が可能な地域の実態を把握し、越冬を規定する環境要因を検索した。 SFTSウイルス媒介マダニ類:兵庫県内の定点調査地としたSFTS流行地と非流行地でそれぞれマダニ相の調査を行った。各調査地のGIS情報、植生、地理利用等の情報を加味し、マダニ相との相関を検討したが、SFTS流行に関わる気温・環境要因は明らかにできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とした蚊(ヒトスジシマカ)の調査が10月まで、また、マダニの調査は12月まで継続したため、その後のデータ整理に残りの時間を費やした。本年度は蚊・マダニの捕集データの収集を第一の目標としていたため、その点は概ね計画通りに進められた。 一方、コガタアカイエカについては、長崎県の定点調査地における捕集結果をまとめ、気温データ(気象庁の指定気圧面観測データ)、NOAAの気象データ(アメリカ海洋大気庁)、および気象解析モデル(Hybrid Single Particle Lagrangian Integrated Trajectory Model)により、高層観測等と後方・前方流跡線解析を行った。概ね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
蚊およびマダニの捕集成果の収集とデータ整理ができたことで、今後はGIS情報、ならびに気象データとの照合を順次進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
蚊およびマダニの生息密度調査とその解析、データ整理に終始したため、GIS関連の経費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
捕集地および周辺の地理情報の入手と照合、ならびに気象データの収集と解析を引き続き行う予定である。
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