研究課題/領域番号 |
16K15078
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
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研究分担者 |
駒形 修 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20435712)
林 利彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90189655)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蚊 / マダニ / 節足動物媒介感染症 / 地理情報システム / リスクマップ / モニタリングシステム構築 |
研究実績の概要 |
蚊の生息密度と周囲の環境との関係性を解析した。まず、無償で提供されている環境データの利用可能性を検討した。蚊の情報は、2015年7月および2016年7月に岡山市で実施した8分間人囮法によって捕集されたヒトスジシマカの雌成虫の最大捕集数を用いた。環境データは、環境省から提供されている第6-7回植生調査および国土交通省から提供されている土地利用細分メッシュデータと数値標高モデルを利用した。植生調査と調査定点を重ね合わせた結果、29定点中26定点が市街地、3地点がアカマツ群落に位置し、定点間における植生の差異はみられなかった。調査地域は森林、建物用地、その他の用地の3種類の土地利用から構成されている。その中でも建物用地に配置された定点で蚊の生息密度が高い傾向が認められた。他方、標高や起伏量については調査地域が約75㎡と狭い範囲のため、定点間の差が殆どみられなかった。分析で用いた環境データは、本研究のような狭小な対象地域の場合には環境の地点間の差異を捉えることが難しいことがわかった。衛星画像あるいは現地調査で撮影した画像による環境指標の利用可能性も検討していく予定である。 SFTSウイルス媒介マダニ類の種構成、生息密度と環境、土地利用要因を比較した。用いた環境要因は、年平均気温、夏季降水量、冬季降水量、海からの距離、積雪日数、TWI、土地利用要因は 周辺250m内の農地、森林、草地、都市面積である。解析の結果、地域における種構成は気温の寄与が大きく、植生/土地利用タイプによってその組成が異なること。また、マダニ種毎の発生には、夏季の降水量が最も寄与していることが示唆された。特に野生動物(シカ・アライグマ)の行動パターンと地域の人口密度等を評価し、GISの条件を加味したリスクマップを兵庫県のSFTS発生地をモデルに作製した。今後は全国レベルで評価できるマップを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・蚊においては、概ね計画通りに解析が進んでおり、リスクマップ作製を目指している。 ・マダニの分布と環境要因との関係解析においては、SFTS流行地に限定したため、気温と野生動物の行動パターン、人口密度との関係を把握するにとどまったが、今後の解析の方針を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・蚊においては、リスクマップ作製を目指し、衛星画像あるいは現地調査で撮影した画像による環境指標の利用可能性も検討する。 ・マダニのリスクマップ作製において、今後はさらに解析地点を増やして全国的なリスクマップの作成に進める予定である。 ・3次元(3D)マップの試作品をさらに検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
蚊およびマダニの生息密度結果と環境要因との関係解析を重点的に行ったため、当初予定していたGIS関連の経費を使用しなかった。 最終年度には、すべての費用をつぎ込み、解析を薦める予定である。
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